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神戸・教師イジメ事件にみるバカ教師が横行する理由はカルト宗教化した教育の現場にあった

日本の学校組織はイジメを起こす最悪の環境

 東須磨小の事件を起こした加害教員のうち2人は、生徒指導担当で、いじめ対策にあたっていたという。「いじめはダメ」と子供には説きながら、自身は同僚へのいじめに走るというこの矛盾は、どこから生じたのか。いじめ問題に詳しい内藤朝雄氏は、「いじめが起きている環境には、特有の『あたりまえ』の秩序がある」と指摘する。 「たとえばナチス・ドイツにおいて、ユダヤ人虐殺を実行していた人々も、もとは普通のおじさんでした。それがある一定の有害な環境で共同生活をしていると、人間が変わってしまう。個人の尊厳に対する感覚が遮断され、外部の市民社会のものとはまったく別の常識が出来上がり、その場の空気に従うようになるんです」  一般常識として、いじめは悪だが冒頭の加害教員はそれを知りながらも、共同生活の中でその価値観を失ってしまったということか。 「どんな集団においてもいじめは起こり得ますが、日本の学校は、いじめがひどくなりやすい環境としては最低最悪の部類。学校では、教育の名のもとで人間のあらゆる面が学校に従属するように強いられます。いわば奴隷的な人格支配が強い点で、そのひどさは北朝鮮に次ぐほどのものです」  ナチスや北朝鮮を引き合いに出すほど日本の学校はひどいのかと恐ろしくなるが、内藤氏は「教育」という意味をつけられると、それが見えなくなると言う。 「暴行、傷害、侮辱、名誉毀損、強要、強制わいせつといった、人間の尊厳を侵す犯罪が起きたとしても、学校では、それを教育的に対処すべき問題というふうに意味づけしてしまいます。そして、教育と個人の尊厳が対立する場面で、教育の論理が優先される。これと同じ構造なのが、オウム真理教の『ポア』。麻原彰晃は都合の悪い人を殺す際、慈悲の心で相手の魂を高いところに引き上げてやろうと言いました。教育とは、オウムと同じく有害な宗教なんですよ」  かくして内藤氏は、学校教育の危険性を強く指摘するのだ。 「子供は学校に通うことで、大人以上に政治権力的な空間を生かされています。その最たるものが中学校の内申書で、これは教師に対して精神的な売春をするよう強いる制度なんです。そして教師の意に沿わない子供はとことん不利益を与えられ、痛めつけられている」  教師同士のいじめや子供同士のいじめはもちろん問題だ。だが、それに加えこうした教師による子供へのいじめこそ社会問題化すべきなのではないだろうか。 【内藤朝雄氏】 明治大学文学部准教授、社会学者。いじめ問題ならびに管理教育問題に関する研究が有名。著書『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』で、いじめが起きやすい日本の学校制度に一石を投じる <取材・文/松嶋千春、野中ツトム(清談社) 写真/朝日新聞社 福原一緒> ※週刊SPA!10月29日発売号より
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週刊SPA!11/5・12合併号(10/29発売)

表紙の人/ 福山雅治

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