ライフ

自衛隊員の任務中の発砲で「殺人罪」に問われる場合も…法の解釈は?

その71 自衛隊員には戦時補償制度が事実上「ない」

テロの危険回避に予防的暗殺をする米国

自衛隊

※陸上自衛隊Facebookより

 BBC JAPANが報道したところによると、2019年10月8日、アフガニスタン国家保安局(NDS)は国際テロ組織「アルカイダ」の重要人物の一人、指導者・アシム・ウマル氏が米国とアフガニスタンの共同軍事作戦により死亡したと発表しました。この共同軍事作戦でアフガニスタン市民が少なくとも40人は犠牲になりました。米国とタリバンの両者がともに死亡を確認していないという不明瞭な報道でしたが、アフガニスタンと米国が合同でアルカイダに対し軍事作戦を行ったことは事実です。  2011年にアルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン氏がパキスタンで殺害されました。作戦はヘリ4機で行われ、わずか40分ほどで終わりました。当時、ウサマ・ビンラディンの左眼球を撃ち抜いたとされる偽暗殺画像がネットで拡散されました。殺害作戦に至る経緯と特殊部隊を描いた2012年の映画「ゼロ・ダーク・サーティ」はゴールデングローブ主演女優賞など数々の受賞作品となりました。この映画は米国政府から提供された情報を元につくられたリアルな作品なので、概要を知りたい人にはお勧めです。  一方、日本は国家や国民の安全のためであっても、このような「予防的攻撃」どころか、相手が攻撃をする直前ですら「先制攻撃」を認めていません。テロリストの殺害には、国際法上、人道的な問題がありますが、それらよりも「自国民の安全を優先する」というのが米国という覇権国家なのです。迫り来る危機も見て見ぬふりで誤魔化す日本と諸外国は、まったく違うロジックで動いていることを私たちは肝に銘じておくべきです。

国の命令の戦闘で殺人犯になる可能性が

「防衛出動の武力行使で自衛隊員が殺人罪に問われることがあるのか?」という議論については、「免責」を示す見解が国会答弁に出たことで解決しました。しかし、2016年の南スーダン派遣部隊が現地のホテルに取り残された邦人を救出する「駆けつけ警護」を命じられました。散発的な銃撃戦があるなかでの邦人救出には、やむなく発砲する可能性もあったのです。  駆けつけ警護の場合、自衛隊の武器使用は「警察官職務執行法7条に準じる」とあり、このなかでは「武器使用は合理的に必要と判断される限度において」とされています。つまり、防衛出動以外の職務で武器を使用したときには、殺人罪で告発される場合もあるということです。この原則は自衛隊のみならず海上保安庁、警察も同様の武器使用規則で運用されており、告発されるリスクは存在しているのです。  難しい言葉になりますが説明します。  刑法上の違法性を阻却しうる事由として、刑法35・37条があります。「35条:正当行為」そして、公安職の公務員の皆さんがよくご存知の「36条:正当防衛」、「37条:緊急避難」です。防衛出動や治安出動以外の自衛隊員の活動においても、武器使用を「35条の正当行為」として位置付ける必要があるのではないかと考えます。もちろん、海上保安庁や警察の正当な法執行活動でも同様の措置が必要です。
自衛隊

※陸上自衛隊Facebookより

 米国は「外国でのテロリスト暗殺作戦」を国際法すら曲げて行います。作戦に関わった軍人個人が罪に問われることはありませんし、誰が作戦に参加したのかも秘匿されます。国家の英雄は国が守るという姿勢を示されなければ、危険な命令を遂行する軍人はいません。国際政治上のトラブルに対処するのはあくまでも国であり、作戦の責任も問われるのは軍という組織で、軍人個人ではありません。これが軍事組織の考え方です。  しかし、自衛官は「軍人」ではなく公務員です。我が国は公務員を守ってくれない国です。これまで「運よく」自衛隊は戦闘をすることがありませんでした。刑法の違法性を阻却できるような、関連する法令改正が必要です。最低限、職務に忠実に従って発砲した自衛官が殺人罪に問われないようにしてほしいものです。
次のページ 
公務員は国や自治体に守ってもらえない
1
2
自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

Cxenseレコメンドウィジェット
ハッシュタグ
おすすめ記事