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自衛隊員の任務中の発砲で「殺人罪」に問われる場合も…法の解釈は?

公務員は国や自治体に守ってもらえない

 今後はテロや紛争の危険も高まり、自衛官が発砲せざるを得ない事態もありそうです。自衛官はPKOの任務で「戦闘地帯ではないが危険な場所」に派遣されていました。  その危険地帯に派遣される自衛官に対し、防衛省の共済組合は紛争地帯でも保険金が下りるPKO保険に入るように勧めています。「自腹」でさらに保険に入れというのです。 「自衛官のポケットマネーをあてにするな!」と呆れてしまいます。
公務員賠償責任保険制度

自治労共済生協の公務員賠償責任保険制度の案内。自衛隊員などの特別職や警察職は「対象外」となっている(自治労共済生協HPより

公務員賠償責任保険制度

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 現在、戦時補償は制度上「ない」に等しい状態です。隊員の自腹で賄うPKO保険が頼りです。国による戦時補償制度をつくるべきです。賞恤金(しょうじゅつきん)という「公務員が殉職したり傷害を負ったりした場合で特に功労が認められたときに、本人または遺族に支払われる金銭」は存在します。でも、「特に功労がない」死傷した自衛官はどうなるのか心配です。  国は自衛官を守ってくれません。しかし、自衛官だけじゃありません。公務員全般に対しても同様です。例えば、最近特に増えているクレーマーによる訴訟リスクがあります。ある自治体の窓口女性の話です。「どいつもこいつもアホで無能な役人ばっかりや。たくさん年休取って遊んどんのやろ。ええご身分やな」とか、「どーせオマエらも陰でズルいことばっかりしよんのやろ。お前らみたいなもんのために税金払とんのとちゃうぞ!」と絡まれることは日常です。頭ごなしの罵倒にも反論することは基本的にできません。  制度上、どうしようもできないことに対する理不尽なクレームを受け続け、福祉の窓口などでは精神的に病んで休職してしまう職員が増えているそうです。ただでさえ人員削減で職員が減らされているのに仕事は増える一方で、業務も回らない、そしてさらに怒鳴られるというギリギリの毎日だと泣いていました。  対処を間違えると訴えられることすらあります。彼女は裁判費用を捻出する専用の保険に自腹で入っているそうです。国や自治体はその職員すら守ってくれないのです。「この木っ端役人が!!」などと怒鳴られたこともあるそうですが、木っ端役人も人間であり、陰で傷つき泣いていることを想像してほしいものです。「それが仕事」「住民サービス」の名の下に、国や公共団体はこれからも自衛官や公務員を守らず、自己責任を強いるのでしょうか?国や地域ために働く公務員のモチベーションがこれで維持できるのでしょうか。  国を守る自衛官、社会を担う公務員に対し、私たち自身もつい便利にぞんざいに扱ってはいないでしょうか。彼らに対するリスペクトと処遇について、私たちは今一度考え直すべきだと思います。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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