映画に携わることで社会性を保っている
著者同士の対談風景
――乙一さんは、以前から映画制作も行われていますよね。そもそも映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
乙一:映画は子どもの頃から好きで、いつか撮りたかったんですが当時はカメラが高くて買えなかったんです。小説だったらお金がなくてもできたから書き始めたら、先にそっちでデビューしてしまって。
大学時代に、映画を撮っている同級生の手伝いをするところから自主映画を撮り始めました。小説って、自分ひとりの作業だからどんどん心を病んでいくところがある。趣味として映画を撮ることで、社会性を保つ、バランスを取っていたところはありますね。
――なるほど。アンドレイ・タルコフスキー監督がお好きと伺ったのですが……。
乙一:タルコフスキーさんの『鏡』とかビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』が、すごく好きでしたね。
――学生当時からシネフィルだったんですね。
乙一:もともとはハリウッド映画しか観てなかったんですよ。でも、当時聞いていた爆笑問題さんのラジオで、太田光さんがタルコフスキーさんの話をされていて。じゃあちょっと観てみようと思ったら、「何だこれは!」って。ハリウッド映画しか観ていなかった自分には衝撃でした。タルコフスキーさんの作品は、時空が歪む感じがあるんです。
――爆笑問題さんがきっかけだったとは! では、崇山さんが漫画家を志した発端は?
崇山:古本集めにハマっていた時期に、昔のホラー漫画のキッチュさに惹かれるようになって、「ホラー漫画同好会」に参加するようになったんです。
その中で、昔少し漫画やってたし俺も描いてみるかと思って、ホラー漫画あるあるを詰め込んだ『恐怖の口が目女』を描き始めたら、全然ウケなくて(苦笑)。「ホラーじゃなくてギャグじゃねえか!」って大不評で、僕も精神を病んでしまって……。でも悔しくて、最後まで描いてやるよ!って執念で続けました。
乙一:そうだったんですね。それは意外でした。
崇山:そのとき僕を否定したのが日本一ホラー漫画を集めてるんじゃないかってヤツなんですが、「人が死なないとホラーとは認めない」「面白くないと褒めない」って男で。でも最終的には、「面白い」と言わせました。
――素晴らしい! その方のマンガ『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』の評価が気になります……。
崇山:それはもう、しっかり満足してくれました(笑)。
物書き。’87年福井県生まれ。映画を中心に、アニメやドラマ、本、音楽などの取材やコラム執筆、イベントMC等を手がける。「装苑」「CREA」「CINEMORE」「シネマカフェ」「FRIDAYデジタル」「映画.com」などの雑誌、Web媒体に寄稿。ツイッター
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<映画情報>
映画;『シライサン』
出演:飯豊まりえ 稲葉友 忍成修吾 谷村美月 染谷将太 江野沢愛美 ほか
監督・脚本:安達寛高(乙一)
配給:松竹メディア事業部
公開:2020年1月10日(金) 全国公開
公式HP:
shiraisan.jp
公式Twitter:
@shiraisan_movie
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<書誌情報>
漫画:『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』
『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』
・あらすじ
オカルト趣味だけが生きがいで、学校では「空気」のように目立たない女子高生トリコ。彼女は古書店で見つけた本に載っていた“シライサン”の伝承のとりこになる。ある日、同じクラスの“イケてる男女”にシライサンの内容を身振り手振りを駆使して披露する。すると後日、彼らは次々と謎の死を遂げていく。トリコはオカルト部を結成し、シライサンの呪いに立ち向かおうとするが……。
原案:乙一 漫画:崇山祟
発売日:2019年11月28日
定価:本体900円+税
頁数:224頁
発行:株式会社 扶桑社
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