更新日:2023年05月15日 13:25
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『シライサン』乙一 & 崇山祟 対談インタビュー プレッシャーを克服するためにサウナに入った

映画『シライサン』Ⓒ2020松竹株式会社

『夏と花火と私の死体』『GOTH』『ZOO』などで知られる人気作家・乙一が、ホラー映画を作った――。これは日本映画界にとって、かなりのビッグニュースではないだろうか。然して放たれたのは、「その名を聞いたら死ぬ」恐怖の怨霊を描いた『シライサン』。「目が異常に大きい」「遭遇したら、目を逸らしてはいけない」「何度でもやってくる」など、従来のホラー映画のセオリーを逸脱した斬新なキャラクターは、大いに話題になることだろう。  だが、『シライサン』の広がりはそこだけにとどまらない。『恐怖の口が目女』で知られる気鋭のホラー漫画家・崇山祟によるコミカライズ、乙一本人によるノベライズと3形態に“増殖”するのだ。さらにこのコミカライズ、映画の展開とはまったく異なる完全オリジナルストーリー。シライサンの内面により踏み込んでおり、必見の内容といえる。  このたび、乙一と崇山の対談が実現。お互いの作風について、さらには制作秘話など存分に語ってもらった。

プレッシャーを克服するためにサウナに入った

左:乙一氏 / 右:崇山祟氏、『シライサン』で異色コラボを果たした。

――まずは、お互いの作品に対する感想を教えてください。 乙一:ネームの状態で最初に読ませていただいたとき、すごくぶっ飛んだ作品になっているなと感じて心地よかったです。後半はアクション映画を観ているような感じで、映画や小説でできなかった方向に入っていくのが楽しかった。事前に「こんな展開にしてもいいですか?」とは聞いていたのですが、いい感じでこちらの予想を超えてきました(笑)。 崇山:(笑)。怒られるんじゃないかとビクビクしながらも、止めることはできませんでした。 乙一:とても良かったですよ。崇山さんは、破壊的なところが魅力。最初に『恐怖の口が目女』を読ませていただいたときに、すごいセンスの人だと思いました。疾走感と、終わりに向けての「どこまで突き抜けるんだ」感があって。今回の『シライサン』も期待通りに突き抜けていて、面白かったです。 崇山:ありがとうございます(笑)。僕は、乙一さんのひんやりとした透明感に憧れていました。情景も浮かぶし、澄んだイメージがあって。そういった部分をどこかに取り入れたいなとは思っていました。 映画を拝見したときは、Jホラーの新たなキャラクターが出てきた感覚があって、怖いのはもちろんだけど、切なさとか爽やかさを感じたんです。胸キュン要素もあり、若者の心の揺れ動きをコミカライズするときの参考にしました。コミカライズの方は最終的にアクションにはなるんですが(笑)、映画を観たときは「青春」というワードがパッと浮かんだんです。 ――最初から完全オリジナルというのは決まっていたんでしょうか? 崇山:はい。僕は最初にコミカライズのお話をいただいたときに、職人漫画に憧れていたこともあって「(ストーリーは)映画のままでいいですよ」と言ったんですが、「それだったら頼みませんよ」と返されて(苦笑)。 絶対オリジナルで行きましょうと言われたときに、じゃあ期待されているのはぶっ飛べるかどうかだなと。とはいえ、根は真面目なので(笑)、シライサンの設定のところは結構考えました。設定資料をいただき、そこから話を膨らませていきました。 乙一:コミック版を読んだあと小説版を読むと、ニヤッとできる部分があるかと思います。ゆるーくリンクしているので。 ――おおっ。そうなんですね。 乙一:あと、シライサンの内面が、コミックでは1番しっかりと描かれていて良いんです。 崇山:いち早く二次創作をやった感じですよね。 ――崇山さんは、乙一さんの作品を「ぶっ飛ばす」のはプレッシャーだったのではないですか? どうやって克服されたのでしょう? 崇山:サウナに入りました。 ――サウナ!? 崇山:プレッシャーなのかすごく肩が凝っちゃって、マジでシライサンに呪われたんじゃないかっていうくらいの異常な肩こりで……。僕は霊的なものは信じていないんですけどね。あとは、お伊勢さんのお清め塩スプレーを使って……。 乙一:おおっ。 ――それ、逆に霊的なものを信じていません?(笑) 崇山:(笑)。風水とかも信じないと言いつつ、ゴミ箱は蓋付きのものを買ってますね。あとはトイレの便座は必ず下ろすとか……。 乙一:そうやって緊張を乗り越えて(笑)。 崇山:呪いから逃げながら描き上げました(笑)。
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映画に携わることで社会性を保っている
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物書き。’87年福井県生まれ。映画を中心に、アニメやドラマ、本、音楽などの取材やコラム執筆、イベントMC等を手がける。「装苑」「CREA」「CINEMORE」「シネマカフェ」「FRIDAYデジタル」「映画.com」などの雑誌、Web媒体に寄稿。ツイッター@SyoCinema

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<映画情報>
映画;『シライサン』
出演:飯豊まりえ 稲葉友 忍成修吾 谷村美月 染谷将太 江野沢愛美 ほか
監督・脚本:安達寛高(乙一)
配給:松竹メディア事業部
公開:2020年1月10日(金) 全国公開
公式HP:shiraisan.jp
公式Twitter:@shiraisan_movie

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<書誌情報>
漫画:『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』


『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』
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・あらすじ
オカルト趣味だけが生きがいで、学校では「空気」のように目立たない女子高生トリコ。彼女は古書店で見つけた本に載っていた“シライサン”の伝承のとりこになる。ある日、同じクラスの“イケてる男女”にシライサンの内容を身振り手振りを駆使して披露する。すると後日、彼らは次々と謎の死を遂げていく。トリコはオカルト部を結成し、シライサンの呪いに立ち向かおうとするが……。

原案:乙一 漫画:崇山祟
発売日:2019年11月28日
定価:本体900円+税
頁数:224頁
発行:株式会社 扶桑社

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