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<純烈物語>紅白決定時、秘めていた”◯◯のために”へ入る一人の名前<第27回>

“あの人”に向けた酒井の思い

 酒井が言うもう一つの50%。そこにメンバーという実体がなくても、純烈のために稼働し、応援したいという心の動きが全国であった。そのパワーが計り知れないことを、日本中を渡り歩いた自分の足を使って実感した。  2度目の紅白出場が決まってコメントを求められたさい、メンバーは「ファンの皆さんの応援なくして今年はなかった」とコメントした。一見するとありがちな、綺麗事の代表的な言葉である。  しかし、純烈のそれはそこにこめられた思いの濃度がべらぼうに違った。なぜならじっさいに全国津々浦々までいって、その情景を心に刻んできたからだ。 「ペンライトを振っている人たちだけがファンじゃないんですよ。おそらく純烈は業界視聴率がいいから、純烈のための企画を考えてくれる人たちがたくさんいる。そういう熱量をもって取り組むと、1+1=2どころか専門家が想像できないような化学反応が起こる。そういうのを、身をもって感じさせてもらった一年でしたね。じゃないとあり得ないよ! 俺自身、すっげえテレビのヘビーウォッチャーだけど、こんなの見たことがない。  やっぱりスキャンダルを起こしたら出られないのがNHKなんでしょと、勝手に思っていました。だけど、足で見てきたこの一年は絶対に出なきゃいけないと思わされる光景だった。田舎にいけばいくほどその熱量がすごくてさ、いい国だなあと思ったね。日本はやさしい国ですよ。世知辛い時代になったと言っているのは、都会の人だけなんじゃねえのって思えるぐらい、僕らが見てきたものとネットのニュースは違った」  それは、本当に津々浦々までいかなければ見えない日本の素顔。だから純烈は、芸能界においてどんな位置まで来ても健康センターにいく。その風景を心へと刻み続けるために――。 「僕は、親族から見るとまあどうにもならない人間なんですよ。紅白に出られて家族も親戚も喜んでくれたってインタビューでは答えてきましたけど、本当は『これぐらい当たり前だろ!』って思われていますから。若い時から働かなくて、こんだけの人をまとめてやらせているのにおまえは口だけで、太って、いつも楽しそうにニヤニヤしやがって。おまえは楽しいだろうけど、どれだけの人に迷惑をかけてきているんだとなるわけです。  紅白に出てもプラマイゼロどころか、まだマイナスですよ。だって、紅白に出てもう一回出ないとなどと言っていたら、友井(雄亮)がやらかしちゃって……みたいなもんですから5、6回出ないとプラスにならないんだよってことです」  週刊SPA!「エッジな人々」のインタビューでそんなことを言っていた酒井。さすがに2年連続とあれば親も祝ってくれただろうと話を振ると、まだ手放しでは喜んでいなかった。「人に迷惑をかけているに違いない息子」だから、それをサポートしてくれている周りに対する感謝は表に出すが、お褒めの言葉はまだらしい。 「夢は紅白、親孝行」を掲げてはいるが、こういう親孝行の形もある。数え切れぬほどの“〇〇のために”を背負って、純烈丸はかつてないほどの荒波の中で航海を続けてきた。酒井の言葉をもって、その“〇〇”に入る名前のうちの一人をお伝えする。 「……うん、友井は友井でホッとしているだろうと思います。あちらの親御さんや兄弟、肉親も純烈に対し申し訳ないと思っていたはずなんです。もし今年出なかったら、ウチの子のせいだとなっていた。でも、これでおまえのせいじゃないよ、出られたんだからって。もう直接は言えないけど、ようやくそう思えます――」 <おことわり>この記事は発売中の書籍『白と黒とハッピー~純烈物語』(扶桑社刊)に収録されています。 撮影/山田耕司
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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