更新日:2023年05月24日 14:19
エンタメ

音楽プロデューサー・佐藤剛氏が語る『純烈物語』が業界的にあり得ない理由

ビジネスマンやマネジメントの仕事をしている人にとって”肝の部分”が書かれている

――紅白2度目の出場後もピリオドを打てなくなりました 佐藤:連載はWebで読んでいたんですけど、本として読んだ時に、スマホやパソコンで見る文字と、印刷された文字とでは気持ちの入り方が、全然違うのに改めて気づいたんです。やっぱり本って、大事だよなあって思いました。あとは、ビジネスマンやマネジメントの仕事をしている人にとって、ここが大事なんだという”肝の部分”が書かれていると思いました。 ――ビジネス本としての面は、意図的に打ち出したところです。 佐藤:今のところ、いい評価をされているんでしょ? 批判の声がないのはなぜなのかわかるんです。音楽とプロレスの両方を仕事にするぐらいの水準で、それらを並列に書ける人がそもそもいないから。しかもそれが現在進行形で、ここまで続いている例は見当たらない。区切らずに続けるだけで画期的ですよね。  現在進行形ということは純烈がこのあと、いい方向にいっても悪い方向にいっても、全部見せちゃおうという姿勢でいるということですから。そこが潔いですよね。おそらく「堕ちてなんかいられるか!」という、純烈としての追い詰め方も含めてです。漢(おとこ)はこうありたいですよね。今、漢なんて死語だから。 ――本をお読みいただいて、すぐレビューを書いていただいたのもすごい瞬発力だなと思いました。 佐藤:それだけ突き動かされたんですよ。僕は去年の10月24日に入院して、翌日に手術して療養中だったんです。本が出た12月の終わり頃はまだ回復の途上で、一人では外にも出られなかった。だけど、あの日は本屋に行きたかったし、病院の帰りに駅ビルで降りて、自分で書店まで歩いていって本を買えた。すぐに読み切って、それから夜中に目が覚めて、バーッと思ったことを書いたんです。 ――そうだったんですか。なぜそこまでして……。 佐藤:なぜやるのかというよりも、自分がやりたいと思うことをやったと思う。たぶん、希望に出会えるという予感がしたんです。純烈へ会いにいった時と同じですよ。どの世界も、そこでシステムや形が定まると、これは白なのか黒なのかって分けられるじゃないですか。でも、そう時こそ“ハッピー”という違う価値観を持ってくることが大切だと思います。音楽やパフォーマンスって、突き詰めたらどっちがいいかなんてわからないですよ。でも、なんのためにやっているかといったら、お客さんを喜ばせるとか、その時々のシーンで光ることができるかどうか、そこに命をかけている。  いつだって答えは結果論でしかないわけだから、思ったようにやるしかないですよね。にもかかわらず守りに入ると、成功例を踏襲する方向にいってしまう。それでダメになっていく例が多い。純烈には、そういう心配がないんだよということが、『純烈物語』の端々に出てくるところが面白いし、希望が持てるんだなって、そう思えるんです。 ●プロフィール さとう・ごう ’52年、岩手県生まれ。音楽プロデューサー、ノンフィクション作家。’74年音楽出版社に入社のあと、’77年から甲斐バンドのマネジャーを務める。’81年甲斐バンドとともに独立後、音楽プロデューサー業を始め、数多くのアーティスト、ライブをプロデュースする。著書に奇跡の歌のノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店)、『美輪明宏と「ヨイトマケの唄」天才たちはいかにして出会ったのか』(文藝春秋)など。3月25日、東京・世田谷パブリックシアターで開かれる小泉今日子朗読、浜田真理子ピアノによる音楽劇『マイ・ラスト・ソング』~久世さんが残してくれた歌~「懐かしの水曜劇場編」を演出する(twitter:@gosan5553) 取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/ヤナガワゴーッ!
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白と黒とハッピー~純烈物語

純烈が成功した戦略と理由がここに
「夢は紅白!親孝行!」を掲げ、長い下積み時代を送ってきた純烈がいかに芸能界にしがみつき、闘ってきたのかを、リーダー酒井のプロレス活動時代から親交のあるライター鈴木健.txtが綴ったノンフィクション


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