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新型コロナウイルス、景気への悪影響はいつまで? SARSと比較すると…

景気後退局面に…!?

 新型コロナウイルスの感染拡大が、日本経済に暗い影を落としている。観光地や繁華街には閑古鳥が鳴き、コンサートから地域のお祭りまで、イベントは軒並み中止。学校は休校になり、子どもを持つ親は出勤もままならない。一部の商品で買い占めは起きていても、過剰な自粛ムードの中で人々の消費マインドは降下中だ。「過去のSARSやMARSより状況は深刻」「東日本大震災後の自粛ムードに似ている」といった声も聞かれるが、これから日本経済はどうなるのだろうか。  身近な事象と景気の関係に詳しい三井住友DSアセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、「日本の景気はこのまま後退局面入りする可能性が高い。19年秋の消費増税の影響からようやく持ち直す動きが見えていたところだったのに、新型肺炎に水を差されてしまった」と話す。2012年12月、アベノミクスと共に始まった戦後最長の景気拡大局面がついに終了し、不況期へと突入してしまう可能性は高いというのだ。  内閣府が算出する景気の基調判断は19年12月で5カ月連続の「悪化」となっており、すでに待ったなしの状況だった。景気の局面変化の定義は「事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す」とされており、半年連続で悪化となればこの定義に該当する可能性は極めて高くなる。  中でも宅森氏が心配するのは、雇用の7割を占める中小企業の景況感だ。2019年の日銀短観・中小企業・業況判断DIは米中貿易戦争の打撃を受けた製造業ではマイナスが続いた一方で、サービス業など雇用の中心となる非製造業では平均して10ポイント前後のプラスが続いており、絶好調をキープしていた。しかし、今、新型コロナウイルスによる自粛ムードが直撃しているのが、ほかならぬサービス業なのだ。 「人手不足が深刻だった中小の非製造業の景況感が急激に悪化すれば、一転して雇用が失われたり、賃金が下がる可能性もある。何とか持ちこたえてほしいのですが」(宅森氏)

SARSは7月初めに収束宣言

 とはいえ、それで大不況期に突入すると決まったわけではない。宅森氏は、今後の見通しについてこう話す。 「SARSを振り返ると、今回と同様に年明けに感染が拡大しましたが、死亡者のピークは5月初め、6月ごろには警戒感が薄れ、7月初めに収束宣言が出されています。新型コロナウイルスも同じような経緯をたどるとすれば、なんとか五輪も開催できるでしょうし、景気後退も短期間で終わるかもしれません。今のところはこのシナリオが最も有力なのではないでしょうか」  それでは万一、新型コロナウイルスの感染が長期化し、五輪が開催できない状況になってしまったらどうなるのだろうか。現実に、国際オリンピック委員会(IOC)の古参委員が、東京五輪の1年延期の可能性に言及している。これについて宅森氏は、景気への深刻な悪影響は避けられないとしながらも、意外な「ウルトラC」が繰り出される可能性を指摘する。 「今年いっぱいで活動休止することになっている嵐が、予定していたイベントの多くが中止となれば、活動を延長する可能性が浮上するかもしれません。もともと、NHKの五輪スペシャルナビゲーターに就任するなど、最後の年に東京五輪での活動で華を添える予定だったのですから、あり得ない話ではない。国民的な人気グループである嵐が活動を続けてくれるとなれば、ファン中心にしてマインド面でかなりプラスに影響するはずです」  東京五輪に万一のことがあれば、日本経済を救うためにも嵐にはぜひとも活動休止の時期を考え直していただきたいものだ。<取材・文/森田悦子>
フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿
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