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2020年「コロナ倒産」した企業を振り返る。レナウン、エアアジアetc.

コロナ オフィス街

飲食、観光、アパレルは深刻な打撃

 本来ならオリンピックイヤーとして大盛り上がりを見せるはずだった2020年、フタを開ければ新型コロナウイルスに振り回され、景気悪化と生活様式の変化により多くの企業が打撃を受けた1年だった。特に深刻な影響を受けたのは、飲食、観光、アパレル関連で、企業倒産も相次いだ。  上場企業では「ダーバン」や「アクアスキュータム」などのブランドを展開するレナウンが破産手続きを開始。老舗ブランドを丸ごと受け入れてくれるスポンサー探しに奔走したが断念、最後はブランドを切り売りするというみじめな末路となった。  また、コロナ禍による航空需要の低迷で、格安航空会社(LCC)のエアアジア・ジャパンが、破産を申請した。同社は中部国際空港を本拠地として、札幌、仙台、福岡への国内線と台北への国際線を運航していたが、すでに航空券を購入した顧客に返金する見通しも立っていない状態。国内線も持っていたLCCの日本撤退で、コロナ収束後の格安旅行も難しくなりそうだ。  レナウンに続き、2社目の上場企業倒産となったのが、デジタルコンテンツ事業をてがけるNutsだ。監査法人が財務諸表監査を進める過程で、帳簿上では8億900万円あるはずの現金が、実際には50万円しかないという笑えないコントのような事態が発覚。これで監査法人が逃げ出したため、別の監査法人を選任したものの、結局その監査報酬さえ払えずに破産に至るという、とても上場企業とは思えないお粗末なコンプライアンスが印象に残る最後だった。  負債額が大きいところでは、「しろくまツアー」「ハッピーホリデー」のブランドで旅行ツアーの企画販売していたホワイト・ベアーファミリー(負債が278億円)がある。旅行業者では過去最大の倒産だったてるみくらぶを上回る負債額となったが、グループ会社のWBFホテル&リゾーツと共に星野リゾートがスポンサーとなり、経営再建を図っている。

コロナ禍の倒産件数は前年比を下回るが…

 とはいえ、2020年の企業倒産は、件数そのものは多くはなかった。東京商工リサーチによると、2020年1~11月までの企業倒産は7215件と前年同期を下回っている。この背景について、同社常務取締役情報部長の友田信男氏はこう解説する。 「コロナ禍の影響で4月までの倒産件数は前年を上回っていましたが、5月以降は政府の助成金や給付金に加え、実質無利子・無担保の融資などの資金繰り支援が功を奏し、倒産件数が抑制されています」  これは、政府の経済対策がコロナ禍に苦しむ企業を救済している反面、本来は淘汰されるべき非効率な企業が延命されていることにもなる。こうした状況は過去にもあり、リーマン・ショック時の2009年から2013年まで、「モラトリアム法」とも呼ばれた「中小企業金融円滑化法」が企業の資金繰りを支援したことで、数多くの「ゾンビ企業」を生んだ経緯が思い出される。ゾンビ企業は投資をほとんどせず生み出す雇用も少ない上、企業の新陳代謝を阻害し成長分野に流れるお金を阻むことで、日本全体の経済成長を抑えかねないという心配がある。  景気が良いから企業倒産が少ない、ということならいいのだが、実際には、助成金と融資、そして借入金の返済猶予で倒産件数が抑制されているに過ぎない。「現実として、倒産を先送りするだけになっているケースもみられます。本来は成長に使われるべきお金が、後ろ向きな企業延命に使われていることになり、健全な状態とは言いがたい」と友田氏は指摘する。
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自ら事業を閉じる選択をする企業が急増
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