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ロシアのウクライナ侵攻「株価はすでに底打ち」シナリオ。その根拠とは

「遠くの戦争は買い」「戦争は号砲とともに買え」

ロシア ルーブル ロシアがウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。第二次世界大戦以降の世界秩序を大きく揺るがしかねないこの戦争に、株式市場にも激震が走っている。攻撃開始が伝わった2月24日の東京市場では日経平均株価は昨年来安値を更新し、下げ幅は一時670円まで拡大し、心理的な節目の2万6000円を割り込んだ。NY市場ではダウ平均が一時859ドル安となる場面もみられ、その後もボラティリティが高い状態が続いている。  この状況に対し、楽天証券経済研究所 チーフグローバルストラテジストの香川睦氏は、「株式市場はすでに底打ちを確認する局面に入った可能性がある」と分析する。 「命の危険に直面する人々がいる中で不謹慎ではありますが、地政学リスクや有事にまつわる有名な2つの相場格言があります。ひとつは『遠くの戦争は買い』、もうひとつは『戦争は号砲とともに買え』です」  情勢をめぐる緊張が高まって株価が大きく下落しても、実際に戦争がはじまるとその不安がいったん出尽くした「あく抜け感」で、売られ過ぎたものが買い戻されやすくなることからこうしたことが言われているという。

指標となる米個人投資家協会の発表

 米国の個人投資家の姿勢も、奇しくもこの相場格言通りになっていると香川氏は言う。米個人投資家協会が毎週木曜に株式市場に対する個人投資家の姿勢を「強気」「弱気」「中立」の割合で発表しているが、2月24日の調査では弱気が53.67%を占めた。これは2020年3月のコロナショックの暴落時を上回る水準であり、過去10年で最大の弱気水準だという。 「この個人投資家のセンチメントは逆張り指標と言われており、弱気割合が極度に高まると買いサインと言われる。実際にその当日から下落一辺倒の相場から脱し、もみあいが続いています」と分析。また、金融市場最大の関心事であったFOMC(連邦公開市場委員会)の利上げ観測が、今回の有事で後退した点も株式市場にはポジティブだという。前年から米国の物価上昇が急ピッチで進んでいたことから、3月のFOMCで0.5%の利上げが実施される可能性が高まっていた。  しかし、侵攻に対する経済制裁で原油や天然ガスに恵まれた資源大国であるロシアからの輸出が細れば、一段の資源高とインフレは避けられない。すでにこの有事を機に、ロシアの株式市場、通貨ルーブル、そして国債はトリプル安に見舞われているが、西側諸国が協調して国際決済網であるSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出すことで、さらに経済的に追い込まれることになる。この影響によるブーメラン効果は憂慮されるリスクだと香川氏は指摘する。 「ロシア経済は深刻な不況に陥るでしょうが、ロシアからのエネルギー輸出がストップすれば西側諸国も無傷ではいられません。こうした環境で0.5%の利上げを強行するのは難しいという見方が優勢となっており、株式市場にマイナスの影響を与える利上げ観測の後退は株価の下支え要因となりそうです」(香川氏、以下同)。
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世界中が底なしの不況に陥るリスクシナリオも
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フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿

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