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ロシア関連の投資信託は売ることもできない。ウクライナ危機にみる“独裁政権リスク”

ロシアは株、債券、通貨のトリプル安

プーチン 独裁 ロシアのウクライナに対する軍事侵攻で、投資家を取り巻く環境も激変した。株式市場のボラティリティが高まる中で、個人投資家はどう振る舞えばいいのか。 【前回記事】⇒ロシアのウクライナ侵攻「株価はすでに底打ち」シナリオ。その根拠とは  楽天証券経済研究所、チーフグローバルストラテジストの香川睦氏はこう指摘する。 「今回の有事で、ロシアは株式市場と通貨ルーブル、そして国債のすべてが暴落するトリプル安に見舞われましたが、日本でもこうした資産を対象にした投資信託が軒並み売買停止に追い込まれています。民主的ではない政治を行う国へ投資するリスクが、改めて浮き彫りになりました」  要するに、独裁者が大きな権力を持つ国にはこうした地政学リスクがつきものであり、大暴落はもちろん、投げ売りすることもできなくなるリスクは否定しにくいところだ。

中国株への投資は安心なのか?

 そうなると気になるのは、中国の存在だ。GDPでは米国に次ぐ世界第二位であり、その規模はロシアの10倍近くに達する。実際、今回のロシアによるウクライナ侵攻を国際社会が阻止できなければ、次は中国による台湾有事につながりかねないリスクは、かねてからささやかれているところだ。  日本の個人投資家の間では中国株への個別株投資は米国株と同様に一般的になっているうえ、中国株を対象にした投資信託も多く販売されている。また、個別に中国だけを対象としていなくても、一般的な新興国株インデックス投信では、構成国比率の4割ほどを中国が占める。こうした新興国株式インデックスファンドは、税制優遇を受けて積み立て投資ができるiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAで保有する人は多いのだ。  有事リスクを踏まえた投資の姿勢として、香川氏はこうアドバイスする。 「歴史を遡ればこれまでに何度もこうした有事が繰り返されてきましたが、そのたびに世界の資産価格は下落を乗り越えて上昇してきたので、まずは投資を続けることが重要です。世界分散投資と積み立て投資で対象と時間を分散しながら続けていきましょう」  投資対象を分散する際は、“コア・サテライト戦略”を意識するのがよいという。コア・サテライト戦略とは、運用資産をコア(中核)とサテライト(衛星)に分け、柱となるコアで比較的安定して運用できる商品を保有し、サテライトとしてハイリスク・ハイリターンの商品に少ない割合で投資することだ。 「相対的にリスクの低い先進国の株式と債券を資産運用の柱となるコアに据えて、新興国の株や債券はあくまでサテライトとし、割合を大きくし過ぎないことが重要です」
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有事の分散投資先として有効な投資対象とは?
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フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿

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