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<純烈物語>“明確な手応え”も……紅白落選の瞬間に芽生えたある感情<第35回>

純烈_元旦大江戸

<第35回>人として出てほしいと思えるからこその感情。純烈とともに新宮も報われた紅白初出場秘話

 純烈に置いていかれまいと、新宮崇志は毎日を必死に走った。あまり語られていないことだが、実は去年の夏まで三山ひろしの担当も並行していた。 「三山で学んだことを純烈で生かせた」とはいうが、一方にばかり思い入れを注いでしまうわけにはいかない。時間的にも、距離感の持ち方もプロとして全うする難しさは容易に想像できる。  三山とも喜びや痛みを共有し、2015年の紅白歌合戦初出場で嬉し涙を分かち合ったのだろう。確かに、そこでの経験や培ったノウハウがあるのとないのとでは、純烈の夢を実現させる上でまったく違った。
新宮マネジャー

クラウンレコード・新宮崇志氏

「レコード会社で勤める人間としてこの業界に携わる中で、こうやったら紅白に出られますよという明確なものはないんです。ただ、選ばれる上で必要だと思われるものを確実に押さえることはやらなければならない。三山についていた中で、それを経験してつかめていたのが大きかったと思います。  具体的には『NHKのど自慢』と『思い出のメロディー』の2つは絶対に出演していなければ紅白も難しい。必須科目ではないけれど、年末に向けての機運として『その2つに出たんだから、じゃあ紅白も出られるよね』という雰囲気作りができる意味で外せない。あとは指針としてシングル10万枚とか、NHKへの貢献度といったところがちゃんとできているかどうか」  のど自慢はテレビ放送が始まる前から続く老舗番組(1946年~)、そして思い出のメロディーは“夏の紅白”と呼ばれるほどで、ビッグアーティストしか出演できない。そこに名を連ねれば、それほど需要があり支持されているという印象がつき、大衆の支持へとつながる。  純烈が紅白に出られる手応えを、新宮が得たのは初出場を果たす1年前。その年も、いけるのではという見方がされる中での“落選”だった。

紅白落選が決まったその日に変わった公式ブログのタイトル

 だが、出場歌手が発表されたその日のうちに、純烈公式ブログのタイトルが「第69回紅白を目指す~」へと変わっていた。残念がっている時間があるなら、誰よりも先に翌年の大晦日へ向かって走り出そう――そんな酒井一圭の姿勢は、肌がヒリヒリするほどの熱量だった。 「どこまで明確につかめていたのかはわからないですけど、その時点でリーダーの中には1年後が見えていたんだと思います。あれでメンバーもスタッフも、そしてファンも『来年こそはなんとしてでもいくぞ!』という共通意識を持てましたね」  たかがブログのタイトルだけで……と他人は言うかもしれない。でも、その“たかが”に気づくかどうか、やれるかやれないかで物事が大きく変わることだってある。その可能性が1%でもあれば酒井という人間は、動く。  こうして2018年も新宮は、純烈とともに駆け抜けた。そして夢にまで見たその瞬間が、ついに訪れる。  以前にも書いた(第26回参照)が、紅白の出場はアーティストやその事務所ではなく、レコード会社に一報が入れられる。つまり、本人たちに伝える役どころはレーベルの人間が担うことになる。  そこはアーティスト担当である限り、自分の言葉で伝えたいと思うだろう。ところが、いつ正式発表があるか前日まではわからない。すでにその日、別の仕事が入っていたら立ち会えなくなってしまう。 「正式な連絡が来るまでは、『決まっていますよ、今年は大丈夫です』なんてNHKから言われることは一切なくて、もしも出演していただくことになったら……という前振りを必ずつけるんです。ホント、この期に及んでまだ言うのか!っていうぐらいに徹底していて。よく新聞に“内定”って出ますけど、内定なんてないですから。何をもって内定と書いているのか、長くこの業界にいますけど不思議で。  純烈も、発表当日の新聞にボーン!とデカく出たんです。いやいや、決まったなんて連絡来ていないからという段階なのに。それぐらい、ギリギリまでわからないんですけど、その場にいられるのは喜びなので、予測の段階でスケジューリングをする必要がありました。じっさい、あの日は群馬でショーがあったんですけど、4週間前に僕がお願いして時間を夜にずらしてもらったんです。もちろんNHKから『その日になるかも』などという匂わせすらもない状況でしたが」  自分はともかく、初出場組はその日に発表会見へ出なければならないので、メンバーの身柄も押さえる必要があった。加えて『うたコン』から「もしも紅白へ出演していただくことになったら、決定の瞬間を撮って番組で放送したい」と依頼されていたため、その衣装合わせとして5人を集めた。  スタッフも含め、みんなから「いけるよな」という雰囲気がにじみ出ていた。でも、じっさいに“当確”を聞くまでは誰も口に出さない。「ちょっと不思議なふわふわ感だった」と、新宮は回想する。
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紅白初出場決定の瞬間
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