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<純烈物語>“明確な手応え”も……紅白落選の瞬間に芽生えたある感情<第35回>

紅白初出場決定の瞬間「ビジネスとして冷静でいられた」

 2018年11月14日午前、クラウンのNHK担当者がまずデスクの電話を受けた。「三山ひろしさんと、純烈さんに出演をお願いします」――その瞬間は、ビジネスとして冷静にいられたという。 「正式に出場を受けましたと僕が聞いて、メンバーがいる会議室へ知らせにいくわけですけど、決まりましたと口にする前には絶対悟られまいと思っていたのが……メンバーの顔を見た瞬間、ダメでしたねえ。頑張ってきた彼らが、あのステージに立てることの喜びですよね。そういう姿を見ているからこそ、報われてよかったなという。  そこは歌手として、人として出てほしいと思える人たちだったからこその感情だと思うんです。これがいくらお金を稼いでくれる人だとしても、ムカつくやつだったらそこに涙はないはずですから」  苦しみや痛みだけではなかった。純烈が報われたのと同時に、それらをともに味わう覚悟でやってきた新宮も報われたのだ。  紅白本番でも、新宮はステージの袖で泣いていたという。5人が呼び込まれMC席のところへいくまではトラブルはないかと心配しつつ、冷静でいなければと努める一方で抑えようのないドキドキ感が収まらず、それどころではなかった。  しかし、メンバーがステージに立ち『プロポーズ』のイントロが聴こえてきたら、もう何もできない。自分の持ち場との境界線の向こうにメンバーがいることこそ「出演取り消しとかにはならず、無事紅白の檜舞台に立てた」証し……あとは音を外そうが関係ない。いいパフォーマンスになるかどうかは、おまけのように思えた。  純烈の夢、そして自分の夢を見届けたあと、新宮は『まつり』を披露するべくスタンバイする北島三郎の後ろについていた。まさにその出番直前というタイミングで、デイリースポーツ紙から電話がかかってきた。

北島三郎の袖で受けた「ある電話」

「白川(裕二郎)さん、結婚していますよね?」  もちろん知ってはいたが、公とするにあたっての対応の段取りなど組んでいない。とりあえず、その場は「そうなんですか?」というスタンスで話を聞き「これから北島の出番なので……」と言って切った。その後、すぐに主要スタッフが集合し緊急ミーティングをおこなった。 「話し合った結果、メンバーには言わずにおいて、紅白のすべてが終わって草加(健康センター)に移動する最中に話をしましょうとなりました。動揺させてもいけないし、NHKを出てワイドショーの受け答えを何ヵ所かしてからの移動だったので。それから白川さんは個別に車の中で説明して、純烈号ではマネジャーの山本(浩光)さんからメンバーに説明しました。  報道として出るかどうかその時点では五分五分でしたが、第一報が出るとしたら朝6時ぐらいで2ヵ所目と3ヵ所目の間だから、出たら対応を考えようと。それで出たあとの相模のステージでリーダーがこういう記事が出ましたと報告したんですけど、その対応までがライブでしたね」  こういう時こそ、リーダーは頼りになると新宮は唸らされた。ほかの人間には絶対にできないと思えるほどの対応力で、プレイングマネジャーとして板(舞台)に立てる人間ならではの肝の据わりっぷりだった。  とにかく絶対に白川を悪者にしてはならないと、酒井は「結婚8年って出ていますけど本当は10年ですよね。そこはどうなんですか?」というツッコミから始まり、ステージ上で公開記者会見の体をとってネタに転化していった。オーディエンスの半数はすでにネット記事を見て「えーっ!?」となっており、もう半分はその場で聞いて驚いていたが、場の空気は「おめでたいことなんだから、いいじゃないか」となった。 「自制が効かなくなったお客さんに、バーッとステージに来られる可能性も考えられたので、僕はずっと押さえられる位置にいました。でも、そのへんは、リーダーとしてはギャンブルだったのか完全に勝てる算段があってのことなのか、お客さんは誰も文句を言うことなく終えられました。  あとからネットで言う人はいましたけど、大事なのはその場にいたファンの皆さんですから。推しメンのしあわせを喜べないのはファンじゃないぐらいのことを、リーダーは言っていましたね」  3ヵ所の凱旋ライブを早朝8時に終えたところで動けなくなり、駐車場の車の中で寝てしまうのも無理はない。夢かうつつか2019年元日の朝――その数日後に、とてつもない痛みが待ち受けているなど知る由もなく、新宮は夢の続きを後部座席に横たわって見ていた。 撮影/ヤナガワゴーッ! 鈴木健txt.
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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