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コロナ相場で日経平均はどこまで下がる? プロが出した答えは…

これまでの高値が“異常値”

不景気

※写真はイメージです

 世界各地で拡大する新型コロナウイルスの感染が、経済を混乱に陥れている。NYダウは史上最大の下落幅を記録し、日経平均株価もコロナショック前の高値から3割下落するなど、すでにリーマンショック級の世界同時株安が投資家を襲っている。  個人投資家に大人気の株式評論家で、2019年秋から株式市場について下落転換を指摘していた坂本慎太郎氏は、「いつ下落に転換してもおかしくなかった相場で、新型コロナウイルスが引き金を引いた」と指摘する。 「日本の企業業績は2018年3月期でピークをつけて、すでに悪化に転じていました。ピーク時の日経平均株価が2万4500円ほど、これは将来の増益期待も織り込んだ水準だったので、19年末にこれに近い水準まで上昇していたのがそもそも“異常値”だったのです」

坂本慎太郎氏

 確かに、年末から年明けまでは株価が堅調に推移していた。消費増税や冴えない企業業績が発表される中で、なぜ株価だけが上がっていたのか。 「米中貿易摩擦で日本株の先物を大量に売っていた外国人投資家が、摩擦の緩和を受けて買戻していたからです。あくまで買い戻しに過ぎないので、買戻しが終われば上昇も止まる。下落に転じるのが規定路線だったところへ新型コロナウイルスの脅威がやってきて、下落が一気にオーバーシュートした状態といえます」

底値の指標は日経平均のPBR

 すでに1万6000円台までつけた日経平均株価は、2018年の高値からすでに3割以上下落している。いったいどこまで下がるのだろうか。そしてこの先、二番底、三番底の恐怖が投資家を襲うのだろうか。 株価「底値のメドとしてよく参考にされるのが日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)が1倍となる水準です。これが2万700円あたりで、いったんはここで下げ止まる様子も見られましたが、原油価格の下落などが重なってあっさり割れてしまった」  PBRは、株価が1株あたりの純資産の何倍になっているかを示す指標で、これが1倍を割っていると、会社が解散した場合に株主に配分される解散価値よりも株価が下回っていることになる。現実として個別銘柄では1倍を割る企業は多くあるが、日経平均株価のような市場全体を示す指標で1倍を割り続けることはあまりないとされている。 「それでも、08年のリーマンショック時や11年の東日本大震災後は、PBRが0.8倍の水準まで落ち込む期間がありました。今、PBRが0.8倍となる日経平均株価は1万7000円弱なので、一時的にオーバーシュートすることがあっても、この水準を大きく下回る時期が長期化するとは考えにくい」  当面、外国人投資家が戻ってくることは考えづらく、日本株の主な買い手は日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、そして個人投資家になると坂本氏は言う。16日には日銀はこれまで年6兆円が目標だった日本株ETF買いの目標額を12兆円に倍増すると発表した。  またGPIFは各資産の保有割合を定めており、株価下落で資産に対する株式の割合が下がれば追加で買いを入れる必要に迫られる。こうしたことから、外国人がいなくても、「買い手不在」といった状況にまではならないと指摘する。  しかしこれは下支えに過ぎず、株価を押し上げる力には乏しいとするのが坂本氏の結論だ。 「5月に3月決算企業の通期決算が出ると、PBRもそれに即した新しい数字に切り替わるので、年内は新しいPBR1倍の水準を挟んでもみ合う展開が続くでしょう。新しいPBR1倍は、2万1000円前後と予想しています」  ということは、それを下回る水準なら投資してよいのだろうか。具体的な投資戦略や、狙いたいセクター、銘柄については次回記事で詳述する。 <取材・文/森田悦子>
フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿
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