更新日:2023年05月24日 15:12
デジタル

高輪ゲートウェイ駅の「無人コンビニ」に行ってみた。現状は無人というより…

無人なのに有人?

無人コンビニ TOUCH TO GOの商品読み取りの仕組みは、以下の通りである。  客が手に取った商品には、当然ながら重量というものがある。それを棚に設置された重量計が感知する。同時に赤外線センサーと天井のカメラが客の動作を認識し、「今この客はこれを手にした」ということをAI(人工知能)が整理する。  客がレジ前に立つと、自分の持っている商品が画面に表示されている。あとは交通系IDカード等のキャシュレス決済で会計を済ませるという流れだ。モバイルSuicaにも対応している。  しかし現状は、この「手にした商品の情報が自動的に反映される」という仕組みは精度が高くない。複数のものを買えば、大抵は認識されていないものが出てくるという状態だ。そういう場合は、客が自分で商品のバーコードをスキャンさせる。  つまり現状では、99%の精度を発揮するシステムではないということ。もっとも、この問題は時間が解決してくれる事柄でもある。AIは自己学習するものだからだ。  それよりも重要なポイントは、人間側にある。TOUCH TO GOのような「手に取った商品のバーコードをスキャンすることなく会計できる」という仕組みの店舗は、ひとつの概念としてまだ成立していない。故に、仕組みや使い方をその場で説明するためのスタッフが必要なのだ。  ここで筆者は、2008年に利用したノースウエスト航空を思い出した。  この頃のノースウエスト航空は既にデルタ航空との合併が決定していたが、そんな最中にセルフチェックインの仕組みを導入した。当時は紙のチケットがeチケットになる転換期だったのだが、「自分の手でチェックインする」という概念がいまだ定着していない時代でもあった。  そのため、無人が売りであるはずのサービスなのに、ノースウエスト航空のスタッフがセルフチェックイン機の前に立って個別対応していた。「チェックインはスタッフにしてもらう」という概念が普遍的である以上、いきなりそれを無人化しても「本当の無人」にはできないのだ。

「本当の無人」が実現する日

 仮に商品認識のカメラや重量計、そしてAIの精度が飛躍的に向上したとしても、TOUCH TO GOは当面の間「有人コンビニ」であり続けるだろう。  その仕組みが「当たり前」のものとして成立していないうちは、「これってどうやるの?」と首を傾げる利用客が必ず発生する。考えてみれば、鉄道駅の無人改札やSuicaもそのような成り立ちを踏まえて確立されたテクノロジーだ。  TOUCH TO GOが「本当の無人」になるには、数年かかるだろうと筆者は思案している。が、そこから先は普遍的な商業施設として定着する未来が待っているはずだ。<取材・文・撮影/澤田真一>
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー
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