永田町きっての「MMT推進派」西田昌司参院議員が提言!
4月3日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、収入が5割程度下がるなど急減した世帯や住民税非課税世帯に限って、一世帯につき30万円を現金給付することを決めた。対象は全国5300万世帯のうち約1000万世帯。支給総額は3兆円規模になるという。
「リーマン・ショック時を上回るかつてない規模の対策を行っていく」
安倍晋三首相がこう話すように、リーマン・ショック時の15兆4000億円をしのぐ20兆円規模の財政出動となる。米国がGDPの1割に相当する2兆ドル(約220兆円)の経済対策をまとめ、欧州各国も「カネに糸目をつけない」異例の対策を次々と打ち出しているが、日本も足並みを揃えた格好だ。
コロナ禍で世界経済が収縮し続けるなか、“救世主”として再び注目を集めているのがMMT(ModernMonetary Theory=現代貨幣理論)だ。’19年に米国で一大論争を巻き起こした経済学説で、一言で言えば「自国通貨の発行権を持つ国がいくら借金しても(自国通貨建ての国債を発行しても)、財政破綻することはない。だから、インフレにならない限り税金や保険料を上げずともすべてを借金で賄える」という主張だが、主流派経済学者は「トンデモ学説」と批判するなど、賛否が分かれている。
そこで今回、1日の参院決算委員会で「消費税10%の暫定的撤廃」や「MMTを駆使した財政出動」を安倍首相に直言し、日本における「MMT推進派」の急先鋒として知られる西田昌司参院議員に聞いた。
西田昌司参院議員
――MMTを巡っては、昨年の時点で麻生財務相が「極端な議論に陥ることは極めて危険。日本をMMTの実験場にする考えはない」と警戒し、黒田日銀総裁も「極端な主張で受け入れられない」と答えるなど、懐疑的な見方が大勢を占めていた。
西田:主唱者の一人であるステファニー・ケルトンNY州立大教授が「お手本」と指摘するように、すでに日本はMMTを実践している。国の借金はGDPの240%まで膨らみ、今も莫大な額の国債を日銀が買い続けているが、金利はマイナス圏で、物価もインフレどころかデフレから抜け出せずにいる。
よくよく考えれば当然で、円を刷って財政赤字をファイナンスすれば、債務不履行に陥ることなどあり得ません。反対派に共通する誤解は、紙幣をモノと捉えていること。確かに、金本位制の時代は、紙幣の価値の裏付けとなる金はモノ(資産)で、有限だった。かつては、紙幣と同じ価値の金と交換できたので(兌換〈だかん〉紙幣)、中央銀行が保有する金の量までしか紙幣を刷れなかったが、今はいくらでも自国通貨を発行できる。これは、日銀の黒田総裁も認めています。
――とはいえ、国家財政を家計に例えて、「日本が約1000兆円と世界一の借金を抱えているのに平気なのは、民間の預金など家計資産のほうが多いから」という意見は根強い。
西田:国の借金が貯金(家計資産)を上回ったら、誰も国債を買わなくなり、価格は暴落。金利は暴騰し、利払いができず財政は破綻する……財務省が危機感を煽る典型的な主張は、大間違いですよ。政府が国債発行によって調達した予算が執行されれば、民間にお金が流れます。つまり、政府が増やした負債と同じ分、民間の預貯金などの資産が増えるわけです。財務省が煽る「民間の預貯金が減って、国の負債が増える」などということは起こり得ない。MMTの主張の根幹は、まさにこの事実なのです。国家全体で考えれば、誰かの資産が増えた分、誰かが負債を増やし、資産と負債は同額になる。財務省がいくら否定に躍起になっても、これまでの日本の財務運営がMMTの正しさを雄弁に実証しています。
――MMT反対論者は、「国債残高がこれ以上増えれば、ハイパーインフレが起きる」と懸念しているが?
西田:財政規律派は20年も前から同じ言葉を繰り返し、ハイパーインフレに見舞われた戦後の日本やワイマール体制下のドイツ、ジンバブエを引き合いに、脅しめいた妄言を続けているが(苦笑)、日本は今もデフレです。歴史上、通貨や国債の過剰な発行でハイパーインフレになった国など一つもない。戦争や革命などで、工場やインフラが破壊され、極度の供給力不足になったときに、ハイパーインフレは起きるのです。今の日本では、発生のしようがない。