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スチャダラパーがデビュー30周年。今だから話せる出来事は?

人生がひっくり返った初めてのコンテスト

ボーズ:デビューする前のコンテスト(メジャーフォース主催「第2回DJアンダーグラウンドコンテスト」で特別賞を受賞/’89年)で、『太陽にほえろ!』のテーマソングでラップしたとき、初めて大勢の知らない人たちの前でウケたんですよ。それで、いとうせいこうさんや高木完さんに認められ、完全に自分の人生がひっくり返った感じがしましたよね。 アニ:目に見えて変わったよね。 ――それが公の場でウケた初の体験? ボーズ:うん、「あ、ウケてる! 今までウケたことないのに」っていう(笑)。 アニ:あれ、よく思いついたよね。 シンコ:渋谷のイエローポップ(中古レコード店)で『太陽にほえろ!』のシングル見つけて、「これだ!」と。 アニ:俺もよく憶えてる。コンテストの前にシンコに「すっげぇいいの思いついた! これ、やったら絶対ウケるよ! どうかな?」って言われて。即「すっげえ、いいじゃん!!」って(笑)。 一同:わはははは! ボーズ:それを思いついたことが、スチャダラパーができた瞬間だから。結局、その時にウケた、そういうことをずっと続けてるだけなんだよね。「どうやって人がやらないことをやるか? もっと意外な面白いことはないか?」って、ずっと探してる感じ。 ――探し続けて30年ですね。 ボーズ:それまでウケるってこと自体がわかんなかった。自分たちが何かやって、ひとが喜ぶっていう体験はあの場が初めてだったから。だから、人生であれ以上の変化はないよね。 シンコ:劇的に変わったもんね。 ――この30年でラップ自体の位置づけも格段に上がった気がします。アリアナ・グランデやK-POPのアイドルもラップありきですし、中高生のあいだでも「ラップが下手だとダサい」みたいな感覚があるそうで。 アニ:ええーっ、じゃあマズいじゃん俺とか(笑)。 ボーズ:自分で言うな(笑)。 ――でもカラオケで「俺、スチャアニ」と歌ったことがある人はそれこそ星の数ですし、間違いなくラップの地位向上における立役者だと思います。 アニ:いや、キャリアがあるってことで、多少かさ増しもされたりねえ。 シンコ:かさ増し(笑)。 ボーズ:大丈夫、そもそもラップ巧いって存在でもないから(笑)。 アニ:なんなら「リスペクト税」とか構築しておけばよかったよね。「スチャダラパーが好き」って言うと、チャリーンってお金が入ってくるみたいな(笑)。 ボーズ:結局カネか(笑)。

3人がそれぞれ振り返る、30年の「スチャダラ事件簿」

▼アニ…2大スターとの共演も実現。豪華海外レコーディング 結成10周年のご褒美として、アルバム『ドコンパクトディスク』はNY録音が実現。ビースティー・ボーイズのアドロックとデ・ラ・ソウルのトゥルゴイが参加。 ▼ボーズ…人生を激変させた『太陽にほえろ!』ラップ 初めて参加したメジャーフォース主催のコンテストで特別賞を受賞。『太陽にほえろ!』のテーマソングにラップを乗せたパフォーマンスは、今でも語り草に。 ▼シンコ…憧れの電気グルーヴと夢のようなコラボ ’80年代後半、石野卓球とピエール瀧が組んでいたユニット「人生」のファンだったシンコ。後にユニットを組んで音楽制作を共にするとは想像もしなかったそう。 【スチャダラパー】 ANI(アニ)、Bose(ボーズ)の2MC、そしてDJのSHINCO(シンコ)によるラップグループ。’90年にデビュー。洒脱なトラック、日本のサブカルチャー要素を盛り込んだコミカルかつ知的なリリックで、文化系ラップを確立。代表作に小沢健二と共演した「今夜はブギー・バック」(’94年)、「サマージャム’95」(’95年)、電気グルーヴと共演した「聖☆おじさん」(’05年)など 取材・文/結城雅美 撮影/渡辺秀之
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シン・スチャダラ大作戦
スチャダラパー
エゴラッピンやライスムターとのコラボ作品も収めた計13曲。「ここ3年ぐらいのあれこれが詰まってる」(ボーズ)。ジャケットと特典のCDは3種類。スペースシャワーより発売中/3300円
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