活動開始して2年くらい経つと、「妖怪」と人間のバランスを取るのが難しくなってくる
「SNS芸人をやってると、大体2年くらいでキャラと自分が解離してくる」(プロ奢ラレヤー)
プロ奢 へー。「レンタルなんもしない人」は、この2年で何か変化とかってありました?
レンタル 大きなところは変わってないですね。毎日楽しいし。無料から有料にしたぐらいかな。
プロ奢 僕、
2年ってちょうど岐路だと思うんですよ。新しいことを始めて最初の2年ってスタートした当初の感性のままで、熱を維持してやれる。でも人間って2年あれば結構変わるじゃないですか。核の部分は変わらなくても、食に興味なかったのに興味でてきたり旅行が好きになったり。自分がこれまでやってきたことと2年で変化した部分のズレみたいなものが徐々にでてきて、気持ち悪くなっていく気がする。
レンタル やってきたことと人格が乖離していくっていうのは確かにありますね。
プロ奢 そう。それが始まるのが大体2年ぐらいかなと。僕の周りの妖怪みたいな奴らもみんな2年を境に「なんか変えなきゃ」みたいな気持ちになっていく人が多いんですよ。
レンタル 活動自体は何も変わらなくても、自分自身のちょっとした変化とか熱量の違いっていうのはどうしても生まれてしまうから……。
プロ奢 「人間」を売り出すと、時とともに乖離し始めるのは仕方ないのかなー。でも買い手は2年前と変わらずに「同じ味」を求めてくるわけで、マクドナルドのフィレオフィッシュを食べにきてるのにだんだん照り焼きバーガーっぽくなってきたらイヤじゃないっすか。それはわかってるんだけど「人間」を売ってる側としては、味を変えたくなるんですよね。
別にやらなくていいのに麺を改変しちゃうラーメン屋みたいな(笑)。
レンタル なるほど。
プロ奢 「簡単な受け答えしかできかねます」って言ってたのに「やっぱめっちゃ喋りたいわー」って意識がいつか出てくる日がくるかもしれない。そのときに「レンタルなんもしない人」を続けるのか、森本さんをやりはじめるのかっていう。別にどっちがいいとかじゃなくてね。
レンタル だんだん余計なことをしたくなってくるっていうのは人間だからありますよね。
「アトラクションで、殺人鬼に見つかったのにスルーされた」
プロ奢 あ、やっぱりあります?
レンタル 割と初期からあります。僕の場合は業務中にそういう感情になることはなくて、暴れたくなるのは主にTwitterですね。
なんとなく飽きてきたな、変えたいなと感じたら、Twitterでキャラ変してみる。
プロ奢 そうすると安心する?
レンタル 一個のキャラで染まってるなーって感じるとソワソワしてくるんですよ。僕は特に品行方正なキャラを求められがちなので、いきなり絡んでくる人を「お前」って呼んでみたり、自分のこと「俺」って言ってみたり。ソワソワしたら、変えてみる。ツイッターで発散してるから逆にサービスのほうは何も変わらずにできているという気がしますね。
プロ奢 意識的にSNSで発散するっていうのはいいっすね。妖怪のままうまく生きれる人は少ないから人間らしさを忘れないことは大事。会社員がなんでヤフコメで悪口を吐き散らしているかって、それで日々の生活とバランスとってるわけじゃないですか。僕らみたいに曖昧な生き方をしていてサンドバッグになりやすいタイプも、たまにはSNSで発散しないとね。
レンタル 僕の活動自体はそこまで人間性は求められていないけど、SNSでちょこちょこ人間っぽいところを出しているのも、逆に見てる人にとってもいいのかもしれない。
プロ奢 うん。僕がレンタルさんのエピソードで好きなのは、会社員時代に「お前なんもしねーな、本当いてもいなくても変わらない」的なことを上司に言われていたってやつ。
それで今はそれを仕事にしているじゃないですか。普通にパワハラなんだけど、上司は先見の明があるよね(笑)。空気みたいな人ってなかなかいないし。
レンタル ずっと存在感のない人生だったんで……。これぐらい有名になったら昔の友人とか普通は連絡きたりするじゃないですか。全然来ないんですよね。空気みたいとはいえ、こんなに来ないもんかと。こないだは殺人鬼に追いかけられるっていうアトラクションがあって僕も同行したんですけど、
殺人鬼に見つかったのにスルーされました。
プロ奢 もう才能ですよ、それは。
【レンタルなんもしない人】
既婚者で1児の父。「なんもしないこと」を前提に自分を全国各地に派遣する“レンタルなんもしない人”サービスを展開中。twitter:(
@morimotoshoji)。著書に『〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます』(河出書房新社刊)など。4月8日、テレビ東京にてドラマ「レンタルなんもしない人」(主演:増田貴久)が放映開始
【プロ奢ラレヤー】
本名、中島太一。23歳。「他人のカネで生きていく」をモットーにツイッターを介して出会ったさまざまな人に「奢られる」という活動をし、現在フォロワー約9.5万人。奢ってくれた人々との邂逅を綴った「奢ログ」を含む日々の考察を有料note「プロ奢ラレヤーのツイッターでは言えない話。」として配信中。
<取材・構成/片岡あけの 安(本誌)>