「完全自殺マニュアル」鶴見済×プロ奢ラレヤーが語る、“贈与経済の今後”
著書『嫌なこと、全部やめても生きられる』(扶桑社)が、発売から3か月足らずでアマゾンレビュー数200以上と大好評のプロ奢ラレヤー。
対するは1993年、著書『完全自殺マニュアル』(太田出版)が100万部のベストセラーとなり、『0円で生きる』の最新刊があるフリーライターの鶴見済氏。
世代は異なれど、生きづらい世の中に一石を投じる2人に「なぜ人は嫌なことをやめられないのか?」を語ってもらった。
鶴見 僕らの共通点はフォロワーがやや被っているところじゃないかな。僕がやっている居場所にはプロ奢さんに影響を受けた人やプロ奢さんのような活動をしたいっていう人も来るんですよ。ニート界隈とかね。
プロ奢 ニート界隈(笑)。曖昧な人類はいっぱいいますからねー。お金がなくてもある程度エンタメは享受できるし、活発なニートは僕の周りにも多いですね。
鶴見 そもそも僕が最初にプロ奢さんの活動に興味を持ったのは、これは「贈与経済」じゃないかって思ったから。
今ってお金の経済が基本ではあるけど、昔はモノを貰ったりお返ししたり、手伝う代わりにご飯を食わしてあげるとかで経済がまわっていたわけじゃないですか。
プロ奢さんの活動も「なにもしてない」と批判されるけど、お金が介在していないだけで実は相手にすごく価値を与えていると思う。そのお返しとして食べ物をもらってるだけのことで、本質は「働いてる」のと変わらない。プロ奢さん自体が贈与経済そのものだと思うんです。
プロ奢 お金が介在しないからこそ「ちゃんと働け」とか怒られますけどね。結局、みんなお金大好きなんですよ。
鶴見 お金に換算されないものの価値ってよくわからなくなるんだろうね。
プロ奢 数字で測れるかどうかっていうのが大事なんですよ。わかりやすい指標がないと結局なんの価値があったんだろうって話になりやすい。他人から見た時も数字があったほうが理解されやすいし、自分で振り返った時にも不安になる。そういう意味で「お金」は便利ですよ。
鶴見 結局、「何か」を成し遂げた人の「すごさ」って、どれだけ稼いでいるか、どれだけ売り上げたかとか金額で見られることが多いでしょう。いっぱい稼ぐ=すごいことをしたんだ、っていう。その人が何をしたか、よりも数字が並んでる方が人は納得するんだよね。
プロ奢 「プロ奢ラレヤー」が理解されないのも仕方ないっすね、まあ別にどうでもいいけど。僕のことは何で知ってくれたんですか?
鶴見 やっぱり俺は0円研究家なので、こういう活動している人は早い段階から注目してましたよ。最初は奇妙な存在だったと思うけど、その後に「レンタルなんもしない人」さんとか出てきて、だいぶ一般化されてきたよね。
プロ奢 今も十分奇妙ですよ。僕は怒られがちなんでアレですけど、レンタルなんもしない人はドラマ化しますから。しかもジャニーズ主演で。すごい。
鶴見 プロ奢さんが怒られがちなのはね、態度が全然優等生的じゃないからだと思う(笑)。でもそういう態度に俺はすごくホッとする。たぶんプロ奢さんが怒られるのって「奢られて生きてる」ということより、世の中の「ちゃんとしよう」という雰囲気を全然持っていないから。
だけど「ちゃんとしよう」ばっかりだと世の中きつくなっちゃうんですよ。『嫌なこと、全部やめても生きられる』の本もまさにそうだけど、「嫌なことやめちゃおうぜ」ってどこかで誰かが言わなきゃ世の中って何も楽になっていかないんだけどね。
プロ奢 ヤフコメで僕を批判してくる人は、僕の「嫌なこと」をすごく普遍的なものとして解釈するんですよね。「嫌なこと」で想起するものって、本当は人によってすごく分かれると思うんですよ。
たとえば僕は個人的な理由で「靴下履きたくないなー」と思うし、同じように「満員電車乗りたくないなー」って思うんだけど、それって別に僕のパーソナリティに基づいてるものじゃないですか。だから「嫌だからやめた」と言っているだけなのに、「満員電車は嫌だから乗らない」と言うと、まるで自分の人生を否定されたかのように感じてしまう。
鶴見 僕も例えば「フリーランスいいよ」って言うと、「でも全員はできないじゃん」「食えないじゃん」と言われてしまう。僕だって「みんながうまくいく」なんて思ってないし、言ってもいないんだけど。最初、僕はサラリーマンだったけどすごく苦しかったんですよ。会社勤めや人間関係が本当に苦手で。だから同じように苦しんでる人に向けて「こういう生き方もあるよ」と言いたいんだけどね。「みんながみんなそうじゃない」「人生そんなに甘くない」と必ず否定する人が現れる。
プロ奢 そもそも「みんなができること」なんてクソつまんないですからね。うまくいくはずもないし。
鶴見 そうだよね。でも全員に当てはまらなくても、選択肢は増やしたほうがいい。
「プロ奢ラレヤー」は贈与経済?
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