コロナ禍で大打撃の民泊投資。売上90%減の大赤字に…
未だ終息の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。4月24日にはカプセルホテルを展開していたファーストキャビンが東京地裁に破産を申請するなど、とりわけインバウンドビジネスへの影響は深刻だ。個人でも参入しやすいビジネスとして人気を集めた民泊の現状はどうなっているのか。
「2月からぽつぽつとキャンセルが発生して、3月中旬になるとインバウンド需要が激減。それでもまだ国内旅行やビジネス需要があったのですが、4月8日の緊急事態宣言で完全に日本人需要も消滅しました」
しかし、かなり逼迫した状況ではあるものの、座して死を待つことなく大神氏はリカバリーに取り組んでいる。
「影響が出始めた物件に関して、早い段階で貸し会議室にコンバートしました。会議室で儲けようというわけではなく、せめてこのコロナ禍をトントンで回せればいいと思っています。立地のいい物件をホールドするための対処です。すでに宿泊予約が入っている物件は、ゲストさまへ連絡してできる限り物件変更に協力してもらっています」
民泊から貸し会議室へと路線変更に踏み切った大神氏だが、思わぬ幸運に助けられているという。
「いつも民泊部屋のセットアップをお願いしている業者に連絡をとった際、『企業の廃業や、拠点縮小の引き合いが多くて、什器の廃棄にも費用がかかるので、引き渡ししないか声かけてみます』と言ってくれました。そのおかげで家具類の多くはお譲りいただいたもの。ほとんど何も買っていません。なかには新品かと思うくらいきれいなものもあって驚いています。不況を肌で感じる話ですが、ありがたいですね」
こうして大神氏の貸し会議室はデスクや椅子、ホワイトボードといった家具類を撤退企業の放出品で揃えており、初期投資の経費削減に成功している。
少しでも出血を減らすべく、すでに20室を貸し会議室へ用途変更した大神氏。コロナの終息が不透明な中にあっても、民泊事業を撤退する考えはないと断言する。
「民泊事業に対して将来性を感じていますし、短期的な目線では見ていないので撤退を考えたことは一度もありません。事業なので上がったり下がったりは当然のことです。たとえば、2年前の法改正で民泊業者が一掃された時期がありました。撤退する者がいる一方で、市場が整備されて、残った合法民泊はそれまで以上に収益性が上がりました。今回の新型コロナウイルスの影響による淘汰はありますが、生き残ればまた同じことが起こるでしょうし、世の中にとって便利なものは残り続けると思っています」
民泊投資継続への決意は揺るがない大神氏は同業者に対してもエールを送る。
「状況は一人ひとり違うと思いますが、皆さん苦労していると思います。できる限り工夫できることをしながら、このときを乗り越えましょう。私の民泊仲間もマンスリーや撮影スタジオにするなど、知恵を絞って耐えているところです。みなさんと終息の日を迎えて喜び合える日が来ることを心待ちにしています」
未曾有の危機に瀕しながらも民泊オーナーたちはその可能性を信じて必死に生き残り策を講じている。
大神麗子氏
学生の頃に自習用のレンタルデスクを借りたことがきっかけで、不動産を買わずに収益化するビジネスの可能性に目覚める。「買わない不動産投資」をテーマに民泊ビジネスの第一人者として、メディアやセミナー講演で可能性を提唱している。著書2冊『買わない不動産投資 ドル箱宿泊所』『民泊2.0』が好評発売中不動産、マネー、ネットカルチャー分野を得意とするフリーライター。社会事情についても執筆する。著書に『サラリーマンのままで副業1000万円』(WAVE出版)。X(旧Twitter):@yuutaiooya
そう急速に落ち込んだ民泊需要を振り返るのは、民泊ビジネスの第一人者で複数の著書がある大神麗子氏だ。
「私の物件で一例をあげると、四谷三丁目駅徒歩4分の物件で民泊をしていて、最盛期は月50万円の売り上げがありました。しかし、コロナ後は売り上げ90%ダウン。家賃13万円を支払うと赤字となります」
予想外の展開に助けられる場面も
「民泊撤退の考えはまったくない」と断言
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