とはいうものの、現実に中国という国家は存在し、軍事、経済面で巨大なプレゼンスを誇る事実に向き合わないわけにもいかない。
最後の香港総督を務め、一代貴族であるクリス・パッテン議員(イギリス)は、今回のコロナ危機における中国責任論を、<火事の真っ只中にあって、放火魔を特定するようなものだ>として、意味のない行為だと切り捨てる。その一方で、将来同じような災難を回避すべく、中国との付き合い方を見直すためのレッスンとすべきだと論じている。(「Dealing with China After COVID-19」 『Project Syndicate』4月21日)
パッテン議員は、中国の不道徳かつ危険な指導体制を認めたうえで、それでもこのコロナ危機から脱するために、中国に対して粘り強く国際協調を働きかけるべきだと訴える。そうして、したたかにルールに従わせることで、発展的な自壊を待つというのである。
<いまのところ、中国共産主義は現実に存在し、人類に対する挑戦でもある。そして、体制の構築した高度な監視システムによって、共産主義は揺るぎないものに見えるかもしれない。だが、歴史上のあらゆる独裁体制がそうであったように、いずれはよりよい政治体制に取って代わられるものなのだ。それは、最高の文明を体現するための政治制度を持つべき中国国民にとってはもちろんのこと、その他の人類にとっても、よりよいものとなるだろう。>
あまりにも楽観的だと見る向きもあるだろうが、打つべき手を打ったうえで、無駄にケンカを売らず、静観することが、現状での最適解なのかもしれない。
コロナ危機が、いつ、どのように収束するかは予測が難しい。だが、収束後にやってくる世界で、中国がこれまでのような日常を謳歌できると信じる人は、ほとんどいなくなるのだろう。
<文/石黒隆之>