バイト先の休業で40連休中の30代男性。貯金残高は1万円、家賃が払えない
コロナ禍による職場の休業で、生活困窮者の増加が懸念されている。働いている都内の宿泊施設が休業したため働き口を失った30代男性は、4月上旬の勤務を終えてから既に40連休中だ。貯金残高は1万円余り、月々の家賃すら払えない状況に追い込まれている。
シュッ、シュッ、シュ――。金属バットの風を切る音が、真夜中の公園に響く。木村光男さん(31歳・仮名)は黙々と20分余り素振りを続けると、額にうっすらと汗がにじんだ。「中学時代は野球部だったので、バットを振るのが好きなんです」と久々の運動に表情がゆるむ。
コロナ禍で外出自粛が続く中、誰もいない真夜中の公園が息抜きの場だ。運動不足解消のため、週2、3回続けている。
「バイト先でも1年半近く夜勤をしているので、昼夜逆転の生活に慣れてしまって」
明け方まで起きていることもしばしばだ。
働いている宿泊施設が休業となり、1か月余りが経った。職場の上司から休業中は別の仕事をしてほしいと懇願され、再開後にはまた一緒に働こうとも言われた。
木村さんは、収入が途絶えたのになぜ新しい仕事を見つけないのか。
「いつかやらなきゃと思っていたんですが、ぼんやりとしていたら1か月以上経っていました。コロナで今も少し実感が湧かないんです」
預金残高は1万円余り、月3万8000円の家賃は今月初めて滞納した。
社員と木村さんらアルバイト計8人が、定員約80人の宿泊施設を運営してきた。木村さんは知り合いの紹介で2018年9月からアルバイトを始め、深夜帯のフロント業務を担当。TOIEC760点の英語力を活かし、訪日客の対応をするのに欠かせない存在だった。オーナーの三重徹さん(35歳・仮名)はこう話す。
「(木村さんは)夜勤はなかなか担当できる人がいなかったため、ありがたかった。人見知りせず、誰にでもフランクに打ち解けてくれる姿は頼もしかった」(三重さん)
職場ではたびたび飲み会を開くこともあった。一緒に働いてきた木村さんの窮状に「なんとかしてあげたいけど、会社の厳しい経営状況を考えると難しいんです」と説明する。
木村さんが働く宿泊施設には、既に2月上旬から新型コロナウイルスが影を落としていた。新たな予約を受けるよりも、キャンセル数が上回る事態。訪日客をメインターゲットにしてきた店にとって、影響は深刻だった。春先は桜を見に来る外国人客が利用するため、連日満員が続く繁忙期だ。今年は客足が遠のき、3月の売り上げは前年同月比80%減まで落ち込んだ。
家賃などの固定費だけで毎月数百万円が消える。店では営業を続けても売り上げが伸びないことを懸念した。親会社とも相談し、4月中旬には休業することを決めた。木村さんは4月6日の勤務が最後になった。
当面の生活さえもままならず「コロナ禍がなかったら……」と落ち込むばかり。男性のSOSは届くのか。
訪日客減少で働く宿泊施設が休業、無職に…
預金残高1万円余りと生活困窮「コロナで今も実感湧かない」
2月からコロナで売り上げ減、春先の繁忙期も客足遠のき
新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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