「女子高生の頃から使い続けて35年」テレクラ主婦の“テレクラ愛”を聞いた
昭和、平成、令和と3代にわたって親しまれてきた「店舗型テレホンクラブ(通称テレクラ)」が、絶滅寸前の危機に陥っている。来店した男性が各部屋に設けられた電話に掛けてきた女性と会話できることを売りに人気を集めた出会い系サービスの先駆け。影響力は低下の一途をたどり、警察庁の最新のデータでは全国で営業する店舗型のテレクラ店は50件で2000年代と比べて約10分の1まで減少している。
なぜテレクラは下火になったのか。これまで足を運んだことがなかった20代の筆者が店を訪れて、令和に続く独自の文化を体験した。「(テレクラは)無くてはならない」と語る女性にも出会い、今なお生き残るわけを探った。
――9月中旬、JR山手線沿いの駅近くにある店を初めて訪れた。看板にはきらびやかな電飾灯で「テレクラ」をアピールした店に入るのは正直、好奇心より恥ずかしさが勝る。デカデカとした文字と黄金色の彩色が大きく異彩を放ち、街並みからひどく浮いている。
外観と比べて、店内は思いのほか質素だった。個室ブースが充実した漫画喫茶と変わらない。初めて来たのでいまいちサービスが分からないと男性店員に伝えると、「個室に電話が設置されていますので、音が鳴ったら受話器を取ってお話し下さい」「好みのタイプではなかった場合は別の利用者様へ電話をつなぎますので、ボタンを押してフロントにお戻し下さい」と丁寧な説明を受けた。
雑談がてら最近の経営状況を聞いてみた。
その店員は「千葉や春日部にもあったけど、春先にかけて撤退したんですよね。ウチ系列はもう都内の2店舗しかないんですよ」。なぜ撤退を余儀なくされているのか聞くと「テナント料とか、店を続けていくだけでも結構大変で……」「店を集約したおかげで、昼時から30、40代の人妻さんが結構電話をかけてきますよ」。この店では20代の女性が電話を掛けてくることはほとんどないという。
2時間パック(約3000円)を使って7人と話した。東京、神奈川や埼玉など電話を掛けてきた場所は広範にわたるが、話した女性は全員年上。話し相手が欲しくて連絡してくる人もいれば、デートに誘ってくる人もいた。実際に会うとなるとお金など見返りを求める人が多く、なかなか取材に協力してくれそうな人はいない。
そんななか、埼玉県在住という中年女性の由美子(仮名)さんが承諾してくれた。連絡先を交換して後日会うことになった。電話口で取材の主旨を説明すると、由美子さんは「高校生から30年以上使っているテレクラは無くてはならないものだから、ぜひ聞いて欲しい」と意気盛んだった。
1980年代後半にかけて全国各地で流行したテレクラ。児童買春といった犯罪の温床となるなどを理由に各都道府県で規制条例が制定され、次第に下火になっていった。平成11(1999)年には風営法改正で年齢確認が強化され、営業場所を限定されるなどさらに厳しくなった。インターネットの出会い系サイト普及など憂き目にもあい、年々存在感は薄れていた。
数字にもそれは現れている。国家公安委員会・警察庁がまとめた「電話異性紹介営業に係る児童買春の防止のための対策(平成15(2003)年12月)」によると、テレクラなど電話異性紹介営業の全国の届出件数は平成12(2000)年末時点で3151件(店舗型895件、無店舗型2256件)だったが、平成14(2002)年末には873件(店舗型514件、無店舗型359件)と大幅に減少した。
令和はどうか。警察庁によると、店舗型のテレクラは平成27(2015)年末には全国で100件を切り、令和元(2019)年末には50件。コロナ禍で新規参入がなかなか見込まれる分野でないことから、かつて栄華を極めた日本独自の文化はこのまま無くなりかねない事態となっている。
20代ライターが潜入! きらびやかな看板に気圧され……
1980年代後半にかけ流行したテレクラも今や50件
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新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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