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木村花さんを追いつめたネットの誹謗中傷、サイト運営者の責任追及はできるか?

 5月23日未明、女子プロレスラーの木村花さん(享年22)が亡くなった。  捜査関係者によると、東京都江東区亀戸の木村さんのマンションを訪れた母親(43)が、玄関ドアに「硫化水素発生中」と書かれた張り紙を発見し、119番通報。室内からは母親や知人らに宛てた遺書のようなメモも見つかり、自殺を図ったとみられている。  生前、木村さんがSNS上で多数、匿名による誹謗中傷の集中砲火を受け、悩んでいたことは周知の通りだが、そもそもSNS上の匿名アカウントから発信者を特定し、損害賠償などを求めようと思うと、あまりにハードルが高すぎて、金銭面や時間的都合などから諦めざるを得なくなっているのが実情だ。  正体不明の相手に損害賠償を求めようと思うと、どのようなプロセスが待っているのか。筆者が体験したプロバイダ責任制限法による発信者情報開示請求のプロセスを紹介しよう。

著書への心無い批判に

 筆者の場合、きっかけは著作に対する読書レビューだった。今年1月、鉄人文庫より週刊実話での連載をまとめた『実録 女の性犯罪事件簿』を出版した。過去12年の連載から、女性が起こした性犯罪を約40件取り上げ、その後の経緯まで追加取材したものだ。  ところが、これに対し、自称「りさちん・30歳・O型」という女性から、「無理やり不幸に当てはめたような書き方でなんかうんざりした。できすぎたフィクション小説。文章の書き方に一貫性もない」という書き込みを、読書メーターというサイトに書かれた。  この程度の批判は甘んじて受けるべきだったのかもしれないが、このサイトが意外にも影響力を持ち、著作名を検索すると、1位に顕出されるような状況が1カ月以上も続いた。本書は入念な取材に基づいたルポであるため、フィクション小説とされてはたまらない。そのため、サイト運営者の株式会社トリスタに発信者情報開示請求をすることにした。これは「サイトなんて見なければいい」「気にしなければいい」と言って、この問題を放置してきた我々世代の責任も感じたからだ。

フィクション小説ではない証拠として、10年分の取材ノートを開示する用意はあった

 ところが、同社は「ご連絡いただきました件について、引き続き担当者により確認を行っており、あらためて折り返しご連絡いたします」「お困りのところ大変恐縮ではございますが、返信にはお時間がかかる場合がございますこと何卒ご理解ご了承くださいますと幸いです」などと繰り返し、3週間近く経っても返事をしない。  ようやく返事が来たと思ったら、「担当者」ではなく、最初の「お客様サポート担当」を名乗る者からメールがあり、「発信者情報の開示につきましては、プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインに従い、対応しております。お手数ですが、上記ガイドラインをご確認の上でお手続きくださいますようお願い致します」とのことで、電話帳ほどもある約款をPDFで送ってきた。

著書名で検索すると、該当掲示板が上位に表示され…

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仮処分を求めるためにかかる費用が…
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