所持金残り10円。バイト先の休業で40連休男性の“生活再建”に密着
バイト先の休業で40連休していた男性を先日取り上げたところ、家賃が払えなくなってもなお職探しをしない木村光男さん(31歳・仮名)の行動を疑問視する声が相次いだ。木村さんはその後、所持金が残り10円に追い詰められた。押し付けがましいがそばで見ていた筆者(私)は、彼のサポートを買って出た。
生活再建の道筋が描けるまで手助けしようと思ったが、時間が経つうちに却って福祉の難しさや当事者と向き合う際に忍耐強く見守る必要性を感じている。
「(貯金残高が)残り10円しかありません」
都内でも緊急事態宣言が解除される直前となった5月末、木村さんが元気なく呟いた。働いている宿泊施設が新型コロナウィルスの影響で4月に休業となり、最後の勤務からこの時点で既に50連休を超えていた。「緊急小口資金」の20万円(借用機)が手に入るのは、最短で6月第2週。1人当たり10万円が支給される「特別定額給付金」は申請書すら届いていなかった。
筆者(私)が「まとまったお金が手に入るまで、これからどうするの?」と尋ねると、木村さんは「親にお米を送ってもらって、食いつなぐしかありません」と力ない。筆者は早く何でもいいから仕事を見つけるよう促し、木村さんに現金5万円を貸した。
お金はないけど、働かない。そんな木村さんを見ていて、筆者も苛立ちを覚えた。それでも、正論を盾に自説を展開することは避けた。申し訳なさそうに5万円を財布にしまう木村さんを見て、今度こそ変わってくれると思った。
前回の記事をきっかけに、木村さんは実際に重い腰を上げていた。働こうとしない自身への批判に「記事へのコメントはごもっともなものばかりだった」。辛辣な意見を浴びせられ反論するのではなく、きちんと受け止める。その眼差しには、見返してやろうという強い意気込みが感じ取れた。
漫画雑誌を紐で縛ってまとめたり、散らかしたままだった私物を片付けたり。普段寝床として利用する居間や足の踏み場がないほど散らかっていた5畳分の自室は、徐々に生活空間が広がってきた。
筆者は地元社会福祉協議会に連絡して、1年間無利子で借りられる「緊急小口資金」の申込書を木村さん宅に送ってもらった。木村さんはすぐさま申し込み用紙に必要事項を書き入れ、その足でポストに投函した。
木村さんによると、働いている宿泊施設では7月ごろまで再開のめどが立っていない。当面の生活を維持していくため、派遣業で食いつなぐつもりだった。5月中旬ごろは「仕事を選んでいる場合じゃない」と気持ちを入れ替えていた。
所持金残り10円。緊急小口資金が入るまでお金貸す
部屋の片付けや緊急小口資金申請で生活立て直し図る
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新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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