仕事

ごみ収集員の一日に密着。外出自粛でごみの種類に変化も

ゴミ収集員

燃えるごみの回収に追われる収集員たち

 新型コロナウイルスに伴う外出自粛が続いた影響で、家庭ごみの総量が増えている。東京都がまとめた3月~5月に出された燃えるごみの総量は、前年同月比101~110%を推移。袋いっぱいに詰められたごみが破裂して飛沫を浴びないか、現場では収集員たちが不安を抱えながら仕事に当たっている。  暑くなる時季を迎え、マスクを着け長袖姿での作業は熱中症のリスクも高まる。20年以上ごみ収集に携わる大野あきらさん(仮名・45)に同行して実情を探った

長袖姿の収集員、厳しい暑さでも黙々とごみ回収

ゴミ収集員 6月中旬の昼時。都内の住宅市街地で行われた燃えるごみの回収作業現場で、「パン、パン、パン」と爆竹を打ち鳴らしたような音が響いた。収集車の中に放り込まれたごみ袋の破裂音だ。マスクで鼻を覆っているため臭いは遮られているが、その反面蒸れるし汗が止まらない。厳しい暑さに根をあげる筆者(私)の目の前で、長袖姿の作業員たちは黙々と回収していた。  午前中の作業を終えて事務所に戻ると、収集員たちが着ていた服を洗濯機の中へ入れた。午後の仕事前に洗い終えた作業服に着替え、他の現場に向かう。その日の勤務が終わると、事務所内の大浴場で汚れを落として退勤。コロナ前から続く清潔管理だ。

4月中旬から徐々に増加「年末年始に匹敵する量に」

大野さん

「夏は汗をびっしょりかくので、衛生管理がさらに大事」と話す大野さん

 コロナ禍でごみの量はどうなっていたのか。大野さんの事務所では、近隣住民の生活ごみを回収している。燃えるごみは担当地域を3つに分け、各エリアで週に2度回収に訪れる。4月中旬ごろから収集員たちの間で「最近多くなっていないか」と話題になった。一段と増える年末年始とほぼ同程度の量になっていたという。  統計でもその状況が示されている。東京二十三区清掃一部事務組合がまとめた3月以降の23区内の清掃工場へのごみ搬入量(可燃のみ)によると、3月は12.8万トン(前年比101.2%)、4月は17.7万トン(同108.3%)、5月は14.7万トン(同110.3%)と3カ月連続で増加傾向だ。その一方、企業や飲食店などの事業所から出された可燃ごみは、3~5月前年比86~57%と減少している。大野さんは当時をこう振り返る。 「週末に消費した生活ごみが出される週前半の方が各エリアで多い傾向にありますが、週の後半になっても量が変わらない。むしろ増えていることも少なくありません」  収集車1台(最大2トン)の積載を7割程度にとどめ、代わりに車を追加して対応。積みすぎると袋が破れて飛沫が飛ぶリスクが高まるため、防止策を講じた。

ごみの種類に変化も「家の中を片付けているのかな」

大浴場

作業終わりの収集員たちの汚れを落とすため、利用されている大浴場

洗濯機と乾燥機

大勢の収集員の服を洗うため、洗濯機と乾燥機が備えられている

 外出自粛時にはごみの種類にも変化が見られた。使い込んだタンスやいす、アイロンなど、今まであまり見なかったものが収集された。 「家の中を片付けているのかな。可燃、不燃ごみ共に、不用品が捨てられる傾向が高くなっていました」  繁華街や高級住宅地が立ち並ぶエリアでは、排出されるごみの中身も違う。時代背景や生活スタイルの移り変わりが如実に現れるのが特徴だ。地図に落とし込んだ回収先を頭に入れた上で、時季に合わせてどんなごみが多くなるか把握していく。 「ごみ収集はどこでも同じだと思われがちですが、各エリアの特徴を知るためにはそこで経験を積んでいかないとできません」と強調する大野さん。  分別できていないごみが出されたときには、地元住民に掛け合って指導することもしばしばだ。緊急事態宣言明けから総量も徐々に落ち着いてきたが、いよいよ夏本番を迎える。熱中症対策を心掛けながら、回収作業に追われることになる。
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ごみ袋に感謝のお便り、コロナ禍で日に日に増え
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