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コロナ対策に成功した台湾、日本と明暗を分けた理由は?

疾病予防管理センターの必要性

 翻って日本へ目を向けると、やはり日本にも疾病予防管理センター(CDC)的な司令塔組織が必要ではないかと思えてくる。参議院議員の佐藤正久は、「2009年の新型インフルエンザの流行後、有識者からは日本版CDCの創設が提案されたが、当時の教訓は生かされず、今日に至っています」(FACTA オンライン)と5月のインタビューで語っている。  一方、今回、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の座長を務めた脇田隆字・国立感染症研究所所長は2月27日の日本経済新聞のインタビューで、「CDCをつくれば問題を解決できるのかというと、そうではない。感染研はCDCの機能を一部担っており、平時には効率的な組織になっている。組織をつくっても硬直的なら、うまく機能しない」「感染研は4月に、感染症の流行に機動的に対応できる組織をつくる計画だ。病原体の研究に強みはある。さらに集団を対象に感染症の発生原因や予防などを研究する組織や地方自治体とのネットワークを強化する。手を付け始めたところに今回の感染拡大が来てしまった。今後強化していきたい」と述べている。  これは苦しい主張だ。そもそも感染症の研究機関である感染研がCDCの機能の一部を担うべきであり、自らがCDCになろうとする想定自体に無理がある。  米国だけでなく、英国にもスウェーデンにも、保健省の傘下に公衆衛生庁という組織があり、新型コロナウイルス対策でも陣頭指揮を執った。韓国の新型コロナウイルス対策でリーダーシップを発揮したのも、公衆衛生の博士号を有する鄭銀敬・疫病管理本部長だった。  感染症対策に感染症の専門家が必要なのはいうまでもないが、あくまでも公衆衛生という広い概念のもとに、感染症研究も大切な一部として組み込み、総合調整機能をもった司令塔組織を立ち上げるべきであることを、今回の新型コロナウイルスは教えている。そうしなければ今回のような「感染症有事」的な事態には対応できないことは、はっきりしている。 【野嶋剛(のじまつよし)】 ジャーナリスト、大東文化大学社会学部特任教授。元朝日新聞台北支局長。1968年生まれ。上智大学新聞学科卒。政治部、台北支局長、国際編集部次長、AERA編集部などを経て2016年4月に独立し、中国、台湾、香港、東南アジアの問題を中心に、活発な執筆活動を行っている。『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『銀輪の巨人 ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『台湾とは何か』(ちくま新書)=第11回樫山純三賞(一般書部門)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)等著書多数。最新刊は『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)
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なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか

①“攻め"の水際対策 ②ためらいなく対中遮断 ③“神対応"連発の防疫共同体  “民主主義"でコロナを撃退した「台湾モデル」の全記録!

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