ライフ

コロナで「食費にも困る」大学院生、収入激減で「研究を続けるか就職か…」

仕送りも途絶え、「この生活をいつまで続けられるか」

 愛知県内の実家に住む両親からの仕送りは、もはや頼れない。自動車整備工の父は定年後再雇用されて工場で働いていたが、コロナの影響で春から製造ラインがストップ。収入が途絶えた両親へのサポートを買って出ると、「本当に助かる」と言われた。  山口さんは「両親からは今まで『生活に余裕ある?』『ちゃんと食べてる?』とよく心配されましたが、コロナで今や自分たちの生活すら大変な状況になっているんだなと実感しました」。  大学側からの給付金(5万円)や政府の特別定額給付金(10万円)から、両親への援助に当てるつもりだ。自身は食費を抑えるなど生活費を切り詰めて大学院に通っているが、「この生活をいつまで続けられるか」と不安を隠せない。

就職後に研究再開「他の研究者に先を越されたくない」

 一度休学して就職後に研究を再開することも考えていた。二の足を踏むのは、アカデミックの分野ならではの理由がある。「論文発表しようと思った前日に、他の研究者に先を越されてしまうのも珍しくありません。3、4年頑張ってきたことが水の泡になってしまうということです。私の分野では数年遅れると、他の研究者が達成してしまう可能性があります」。  山口さんは、このまま研究を続けたいと考えている。「研究を完成させて、一区切りを迎えたい」と話し、奨学金を借りて生活を立て直すつもりだ。「(奨学金は)修士課程の時に既に200万円以上借りているため、これ以上負債を追いたくなかった。生活を切り詰めて将来に向け貯えを増やすことも考えていましたが、コロナでカツカツな状態です」。

「学問はぜいたくしているというのが認識にあるのかな」

苦学生 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」(東京)が実施したアンケート(4月9~27日に回答した319校の大学生ら1200人)では、アルバイトの収入が減ったかゼロになった学生は約7割、5人に1人が退学を検討していた。山口さんのように生活が困窮し、学問の道が閉ざされつつある学生が少なくないことがうかがえる。  研究の意義を広めて世の中に還元したいと思っても、そのために長く深く学問を追究するにはお金がかかる。「海外と比べて研究費の助成が盛んでない日本では、学問はぜいたくしているという認識があるのかな」とため息をもらした。<取材・文・撮影/カイロ連>
新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
1
2
おすすめ記事