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元すすきのNo.1キャバ嬢・椎名美月「女ではなく人として好かれたかった」

コロナ禍でエステサロンが大打撃、ライブ配信に活路

椎名美月

イチナナライバー(ライブ配信者)としても人気

 キャバ嬢を辞め、経営者としてこれからというタイミングだった。春頃から続く「コロナ禍」だ。さまざまな業界が煽りを受けたが、それは当然、“密”な空間となるエステサロンにも大打撃を与えた。 「正直、エステサロンの売り上げがめちゃくちゃ落ちてしまって。心の奥底では、何かあればキャバクラで働けば補填できると思っていたんです。でも、キャバクラや夜の店も同じ状況ですからね……」   しかし簡単には辞められない。辞めるわけにはいかない。エステサロンをつくる際、全財産をかけていた。シングルマザーだからって守りに入ってはいけない。覚悟をもって臨んでいたのだ。  世間では“ステイホーム”が呼び掛けられ、家にいる時間が増えるなか、自分にできることはないものか……。  思案するなかで、過去に登録していたライブ配信アプリ「17LIVE(イチナナ)」が頭をよぎった。 「2年前ぐらいに始めたものの、当時はキャバクラが忙しくて……。家ではすっぴんが多かったのですが、人前に出る以上はメイクをきちんとしなければいけない。ちゃんとやろうとすればするほど、あんまり配信できなかったんです。今回のコロナという状況のなかで何もできないジレンマを抱えて。少しでも経営のプラスになればと思い、もう一度イチナナをやってみようかなって」  久しぶりのライブ配信だったが、かつての客はもちろん、瞬く間に注目を集めるようになった。とはいえ、イチナナなどのライブ配信にはコロナ禍をきっかけに多くのキャバ嬢も参入していた。 「アプリ内のイベントでは、ランキングの上位に現役キャバ嬢の方々がいました。彼女たちの強みは、オンラインだけではなく実際に店で会えること。私は引退しているので、なかなか苦戦を強いられていますが……なんとか頑張りたい」  過去の自分が、今の自分を鼓舞する――。そして、その原動力はいつだって娘の存在だ。 「私が40歳を迎える頃には娘がハタチを過ぎる。それまでは何不自由なくやりたいことをやらせてあげられるように、ママは全力でやるだけ。あと2~3年ぐらいは大変かもしれないけど、メイクやコスメのオリジナル商品をつくるなどして、早くコロナのマイナス分を取り返せるようにしたいですね」  元すすきのナンバーワンキャバ嬢と聞けば、光り輝く実績の部分に目がいきがちだ。しかしその裏では、多くの困難と向き合いながらもひたむきに努力を続けてきたのだ。そんな姿を見ていると、“人として”応援したくなる。彼女の挑戦は始まったばかりだ。<取材・文/藤井厚年、撮影/長谷英史>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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