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まるでムーミン谷の家?7棟の個性豊かな自作小屋がもたらす癒し

 気に入った場所が見つかったら小屋を建てる。そこが、遊びの拠点になる。プライベートに自然と向き合う。小屋という装置がそんな贅沢な時間をくれる。小さな小屋だからこそ、お気に入りのデザインを追究できる。そんな小屋の魅力とは? 小屋のある暮らし訪問 第2回 山口 暁さん(和歌山県紀美野町)
小屋のすべて

丘の上に点在する小屋の数々。「自分で建ててみないとわからない」と、種類も工法も異なる小屋を建てつづけた。現在はセルフビルドミュージアムとして、山口さんのガイドで見学することもできる

自然素材と廃材を集めセルフビルドで建てていく

 和歌山市から高野山を結ぶ道中に、先人が長い時をかけて整備してきた棚田が広がる村がある。そばにある小高い丘に並ぶのは、形状も違えば材料やつくり方も異なる、7棟の小屋。個性豊かな小屋を建てたのは、山口暁さん。舞台照明デザイナーとして横浜にも仕事の拠点をもちながら、少しずつ、自力で建設しつづけてきた。
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日が沈み、明かりが灯ると、山口さんの小屋たちはまた違った表情を見せる。この日は未曽有の台風の被害で停電していたが、発電機で明かりを灯してくれた

 都会暮らしをしていた山口さんだが、ライフスタイルを見直すとともに、長男の小学校入学を機に家族で和歌山県に移住。舞台照明デザイナーとしての仕事は東京が中心であったが、自然に恵まれた環境の中に生活の拠点を求め、この土地に出会った。 「おもしろい家を自分で建ててみたい」と家の形式を探していたところ、山口さんは奥様に「どうせならこんな家を」と、埼玉にある「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」へと連れて行かれる。そこで目にしたのは、有機的なカーブを描く、ムーミン谷に出てきそうな建物の数々。「ショックを受けましたね。自然素材に囲まれた丸い家をつくりたい、と思うようになりました」と振り返る。そのころ、ちょうど知人が紹介してくれたのが、わらのブロックを積んで表面に土を塗ってつくるストローベイルハウスだった。ワークショップに参加し、勘どころをつかんだ山口さんは、さっそく実践に移す。
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ストローベイルハウスの屋根は、野地板の上に防水シートを敷いてラス網で瓦漆喰を塗り、軽量土を敷いて草が植えられている

 まずつくったのは、実験的な小さな小屋だ。規格から外れた本畳を数多く譲り受け、壁や屋根に畳を使うことを思いついた山口さん。 「以前の畳の中身はわらでしたから、『和製ストローベイルハウス』ですね」。付近で採れる竹で畳を挟み込みながらパタパタと組み立て、古民家の解体現場でもらった土を練り直して壁を塗った。また、道具を保管するための小屋も、搬送用の木製パレットを組み上げて友人たちと製作した。「身の回りの自然素材と廃材を利用し、セルフビルドで楽しみながらつくる」という山口さんのスタイルが、でき上がったのである。
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中央にアクリルの天窓を設け、竹を組んで屋根を掛けて野地板で覆った天井。ベッドもわらで、ひょうたんランプは奥様の作品

 そうして本格的に取り組んだストローベイルハウスは、幅80㎝・奥行き40㎝・高さ25㎝ほどのストローベイル(わらブロック)200個を入手し、直径約6mの八角形の頂点に立てた柱の間に積み上げていくことに。基礎はU字ブロックを地面に埋め込んでコンクリートを充填。屋根の架構は、中央にアクリル製の天窓を設けたうえ、竹で相互に持たせかけるように組んでから野地板を張っていった。
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ストローベイルハウスの間取り図

「下で切って屋根に上げて張る作業の繰り返しで、本当に大変だった」という山口さんだが、その表情は明るい。ひとりでつくることが好きな山口さんは、地道な作業も難なくこなしてきた。緩やかな曲面の土壁に抱かれつつ、崖の下に流れる川に向かって開かれたストローベイルハウスは、こうしてでき上がった。
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突き当たりのガラス戸は、開け放つことができる。崖に向かってせり出したテラスと連続し、天空に漂っているかのような開放感抜群の時を過ごせる

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小屋のすべて (扶桑社ムック)

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