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行き先を聞いても「真っ直ぐ」としか答えないタクシー客。ドライバーは?

怖い人

写真はイメージです

今や繁華街の酔っ払いは絶滅危惧種

 タクシー稼業、酔っ払いを乗せてナンボの世界です。正直、酔っ払いなんて乗せたくはないのですが、他のお客様さんに比べ単価も高く(繁華街から自宅に帰る)、乗せる時間もほとんどが割増時間(22時~5時)ですので運賃も跳ね上がります。昼間は単価が低く、ただでさえコロナの影響で乗客が減っている中、乗せらざるを得ないのです。しかし、このコロナ禍で接待、会食が自粛され、また会社からも飲み会禁止令が出ているところが多いらしく、そのためにかなりの酔っ払いが減っています。  こんななか、ドライバーたちは血眼になって絶滅危惧の酔っ払いを探すのですが、そういう時は得手してどうしようもない酔っ払いを乗せてしまうのです。「会話が成立しない」、「寝て起きない」、「リバース(吐く)して車内を汚してしまう」……こんなことも最悪ですが、もっと最悪なのが「絡んでくる」酔っ払いです。よくニュースなどで酔った乗客がタクシードライバーに暴力を振るう映像を目にしたことがあると思います。  そこまでの凶暴な酔っ払いは稀ですが、プチ的な凶暴さを備えた酔っ払いは、多数存在します。  つい先日、乗せてしまいました……。  見るからに、という感じの人(タトゥーにスキンヘッドにジャラジャラ系)がふらふらした状態で手を上げたので、つい条件反射で停めてしまいました。だいたいは見た目が怖い人は意外?にも紳士的な人が多いのですが(ギャップの激しさに印象が強く残っているかもしれませんが)、この乗客は見た目通りの怖い人で尚且つ泥酔状態です。  行き先を聞くと「真っ直ぐ」しか言わず、何度聞いても「真っ直ぐ」だけ。埓が開かないので車を停めると今度は絡み始めて来ました。それも訳の分からないことを言い始め、「早く金返せ!」と怒鳴ったかと思えば、「あの時、お世話になりました。御恩は忘れません」と泣き始める。黙っていると怒るし、話を合わせるとまた怒る……これが、だんだんエスカレートしていく。どうしようもない酔っ払いから開放されたい。1分が10分くらい(微妙な長さですが)感じるくらいに時間が長く感じ、「誰か助けて下さい~」との思いで、ナビで近く交番を検索。乗客を警戒しながら、やっと辿り着いた交番。これで開放される…とホッとしたのもの束の間、お巡りさんが…いない!
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一番物騒な時間帯なのに…
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物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」

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