「あおり運転」をされるのが日常のタクシードライバー、対策を語る――大反響トップ3
ここ数年、ニュースなどで頻繁に取り上げられている「あおり運転」。20年6月には改正道路交通法が施行され、以前よりも厳しく罰せられるようになったが、激減しているとは言い難い。
自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険が8月に発表した『2023年あおり運転実態調査』によると、煽り運転をされたことがあるドライバーは53.5%。最初に調査を行った18年(70.4%)に比べれば改善しているが、前回調査の22年(51.3%)よりは悪化している。つまり、半数弱の人が被害経験を持つわけだ。
秋の全国交通安全運動が9月30日で終了したが、安全運転には終わりはない。過去6年分の交通安全に関する記事の中から反響の大きかったトップ3を発表。タクシードライバーを取材した第3位はこちら!(集計期間は2017年1月~2022年12月まで。初公開日2020年7月10日 記事は取材時の状況)
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タクシードライバーはお客の奪い合いをしています。お客をめがけて第三走行車線から第一走行車に捲って奪い取るという荒技(?)も飛び出す始末です。いくら生活のためとはいえ、プロらしからぬ行為をする一部のドライバー(ほとんどのタクシードライバーは優良ドライバーです)のおかげで一般車に迷惑をかける場面を目にすることがあります。そんなタクシー同士は煽り煽られ日常茶飯事です。
一般の車はそんな無茶な運転をしないので煽られることはないと思いきや結構あるんです。タクシーの仕事をしていると毎日のように、「あおり運転」を目にします。世間でも大きく取り上げられ、2020年6月30日には道交法改正で厳罰化の対象にもなった「あおり運転」。そもそも、どんなに話題になろうとも「あおり運転」が減らないのは何故か? それは、抑えられない人の感情の起伏の激しさにあるのです。
車に乗ると普段よりも気が短くなったり、ちょっとしたことでも「イラっ」としたりしませんか?
・道を譲ったのにお礼の挨拶がないことに「イラっ」
・渋滞中の合流地点で順番に合流しているのに入れてくれない車に「イラっ」
・対向車のハイビームに「イラっ」
・急いでいるのにノロノロ走る前の車に「イラっ」
・お客を拾うタクシーの急ブレーキに「イラっ」
・急な車線変更に「イラっ」
また、自分自身が「イラっ」とする運転を自ら犯していたりしませんか? その小さな「イラっ」の突発的な行為があおり運転に発展するのです。
もちろん、不可抗力や巻き込まれによりあおられるケースもあります。全くその気がないのにこっちの何気ない行動(合図のためのパッシングやクラクション)が、相手の気持ちを逆撫でしあおり運転に発展したり、前の車が遅くその車のスピードに合わせて走行(自分があおり運転にならないため)していたら、後続車にあおられたという事例もあります。こちらが良かれと思う行為が仇となる……。車で自分の気持ちを伝えるのは難しいですね。ただでさえ人に自分の気持ちを伝えることが難しいのに……。
わざと低速で走り嫌がらせをする、いわゆる「逆あおり運転」というものが最近は横行しています。場合によっては、この車の後続車はあおり運転をけしかけられ、あおり運転されたなど濡れ衣を着させられる恐れもあるのです。なにを根拠にそんなことを仕掛けてくるのか意味不明ですが、速度違反で取り締まってもらおうと思っても、低速での運転を取り締まる法律はないのです。一般道には最高速度はあっても最低速度はないのです(高速道路・自動車専用道路は、最低速度はあります)。
しかし、速度で取り締まることができなくても、大原則の道路交通法第1条第1項の「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」と明記しています。
なんの臆することはありません。逆あおり運転を仕掛けられて路上でトラブルに発展したら、迷わずに警察に通報しましょう。
「あおり運転」は、誰もが加害者にも被害者にもなりうる
「逆あおり運転」をけしかけられることも
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物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」
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