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九州豪雨で考えた、災害時に一般市民が自衛隊に出動要請できるのか?

毎年のように繰り返される豪雨による河川の氾濫

 近年の気象変動により、日本の降雨量が増えています。気象庁のアメダス(全国)の1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数も、統計期間の最初の10年(1976~1985年)と比較すると、2010~2019年は1.4倍に増加しています。最近、洪水や豪雨による土砂災害の回数が増え、規模が大きくなったと感じていないでしょうか? それは思い過ごしなんかじゃなかったようです。実際に災害頻度が上がっているのです。つまり、ある日突然、豪雨による自然災害が私たちに襲い掛かることを警戒しなきゃならない時代になったってことです。  突然1000ミリを超えるような記録的豪雨が降れば、それを想定して作られてはいない堤防を越えて濁流が宅地を呑み込みます。球磨川では流れ込む河川の水量も加算され、かなりの早さで水が広がって逃げ遅れた人が多数犠牲になりました。  熊本県は電話回線が使えなくなったため、防災行政無線を使って被害状況を把握していたようです。役場や警察、消防に電話がつながらない地域で、被災者は途方に暮れていました。消防や警察、役場など被災地の電話が途絶えるような災害は今後も想定されます。電話回線が使えない場合の通信について改善・提案がほしいところです。大きな災害で「119番」や「110番」が通じないときに救難救助要請が自動転送され関係機関に集約された情報を伝達するシステムの構築をお願いしたいものです。

自衛隊が市民からの要請に応えられない理由

 ここで「消防や警察と同じように災害派遣に行っている自衛隊なのに、なんで市民が直接電話しちゃいけないの?」って疑問を感じる人もいると思います。人によっては「え~。自衛隊って市民要請の電話で動かないの? 優しくないなぁ」って思うかもしれません。  でも、よく考えてみてください。自衛隊は武器弾薬を有し、テロや侵略者の攻撃に立ち向かう武力を持つ集団です。たまたま、災害派遣要請命令を受けて県の救助を手伝っているだけです。武力を持つ組織は厳格なルールと指揮命令系統のなかでしか動くことができません。そのルールを乗り越えて自由に動き始めれば、統制がとれなくなっちゃいます。  それこそ「自衛隊の暴走」などと言われかねません。市民からの直接要請にお応えすることはできないのです。自衛隊の苦しい立場と状況をどうかわかってあげてくださいね。そのうえで、がんじがらめの制度のなかで今日も頑張っている自衛隊を応援してあげてください。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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