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九州豪雨で考えた、災害時に一般市民が自衛隊に出動要請できるのか?

その93 球磨川決壊と自衛隊の災害派遣

九州豪雨で災害派遣された自衛隊が最初にやったこと

自衛隊ビフォアー 記録的な豪雨により熊本では球磨川が決壊し、多数の死者、行方不明者が出ています。自衛隊は発災時から救助活動に動いていました。しかし、広域で被害が発生しているために熊本だけでは対処できず、近隣の自衛隊にも応援を要請しました。  しかし、さらにこの豪雨は福岡、大分、鹿児島などの地域にも被害をもたらしたため、応援に来るはずだった他県の自衛隊もその地域の災害対応で手いっぱいとなってしまいました。不眠不休で対処してくれている自衛隊に感謝したいと思います。  そんな厳しい状況の下、球磨村では特別養護老人ホーム「千寿園」が流され、14人のお年寄りが亡くなりました。人吉市、芦北町、八代市、山鹿市でも被害が広がっています。陸上自衛隊第8師団は山林をかき分け、孤立した集落の人たちの救助、支援を実施しました。  芦北町の国道60号線の河川が氾濫し、橋の上が流されてきた瓦礫などで不通となっている写真を撮影した方から送っていただきました。住宅や樹木をなぎ倒す水の力にゾッとします。しかし、自衛隊はこの完全にふさがれた橋と道を3日ほどで啓開しました。
自衛隊アフター

7月4日の豪雨災害で道路が寸断され、孤立状態が続いていた熊本県南部に位置する葦北郡芦北町。災害派遣された自衛隊の「啓開」よっておびただしい数の木々が除去された(写真上が啓開前、下が作業後) ※読者提供

「啓開」とは、災害時に救援物資を運ぶために最低限必要なルートを作る作業です。大規模災害時に道がふさがれると救難のための人員や装備を入れることができません。水や食料など生きるために必要な物資ですら滞ります。球磨村では悪天候のなか、河川敷や川畑にホバリングで必死の救出が行われていました。ヘリが下りることができる場所すらなければ、運べる物資量は限られます。道路が使えると段違いの輸送ができるのに、たった一つの橋が使えなくなるだけで、その集落は孤立します。この橋が使えるようになったことで、その先の救助、支援ができるのです。自衛隊が不眠不休で被災者のために輸送路を作ってくれることを心からありがたく思います。

頼みの綱である消防や警察の電話が不通に!

 熊本では人吉市、多良木町、湯前町、球磨村で、役場や警察、消防と電話がつながらない状態が長時間にわたって発生しました。私たちは通常、何かの事故や災害が起こったら「119番」で消防への電話をかけます。それがつながらなければ「110番」で警察に連絡する人もいるでしょう。その回線がつながらなければ不安はMAXになります。  そこで、非常時に「自衛隊」に助けを求めようと考える人も多くいたようです。今回の熊本の災害では自衛隊にも一般市民から救助要請や相談の電話がかかりました。災害派遣で動いている組織なのだから、市民の救助要請に対処するだろうと考える人が多いのはわかります。でもね。消防や警察の場合は普段からたくさんの一般市民の通報や相談を受けるために電話対応のシステムを常備しています。しかし、自衛隊は一般市民から出動要請を受ける組織ではありませんし、そのための設備も環境も設定していません。結果として、押し寄せた相談電話のせいで自衛隊が本来その指揮命令で必要な連絡に支障がでるシーンもあったようです。  災害時に自衛隊を動かすのは都道府県首長の災害派遣要請です。直接市民の連絡で動くことは許されないので、電話がかかればかかるだけ電話対応で自衛隊の動きに支障が出ます。これは盲点でしたね。  一般市民が要請しても自衛隊はその要請に応えることができません。災害時に直接自衛隊に直接救助要請の電話するのは、残念ですが救助を遅らせてしまうだけなのです。電話対応をしている間、自衛隊内で必要な行動の指示命令や状況報告が滞ります。どうか、自衛隊に直接電話するのは我慢してくださいね。
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毎年のように繰り返される豪雨による河川の氾濫
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