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イージス・アショア配備中止で突き付けられた「敵基地攻撃能力」を保有すべきか?という議論

その90 見直し迫られる日本の安全保障戦略

イージス・アショア配備、突然の「白紙撤回」

護衛艦「あたご」型

海上自衛隊公式HPより

 6月15日、河野太郎防衛相は秋田・山口両県への弾道ミサイル迎撃システム(イージス・アショア)配備の白紙撤回を表明しました。理由としては「迎撃ミサイル発射時に使う推進装置(ブースター)の落下地点が、陸上自衛隊のむつみ演習場内に確実に収まらない」という技術的な問題が発覚したから、としています。  イージス艦に搭載されているSM-3迎撃ミサイルの場合は、発射されても海中にブースターを落とします。陸上への配備となると国土に落ちる可能性があるため、こういった問題を解決しなければなりません。  しかし、これまでは特に危険はないと説明してきた経緯もあり、この突然のイージス・アショア配備中止に対しては、配備先の自治体だけでなく自民党内からも疑問の声が上がっています。  現在のミサイル防衛システムはイージス艦を軸にしていますが、そもそも、イージス艦とは日本を守る護衛艦隊の能力を最大限に引き出す役割を担うものです。そのイージス艦をミサイル防衛だけに充てれば身動きが取れなくなり、本来の能力が封じられてしまいます。つまり、例えば南西諸島の防衛が手薄になるというような危険を孕んでいるのです。  さらに、海上自衛隊の人員不足の問題もあります。24時間海上で長期監視にあたるイージス乗組員は洋上から離れられず、休みも取れません。  物理的にも24時間の365日の警戒は不可能であり、ただでさえ人員不足の海上自衛隊です。イージス艦乗組員の負担が大きくなれば、それだけ離職者も増えます。その意味でも、イージス艦でのミサイル対応は限界だと言えるでしょう。  これに対し、イージス・アショアは巡航ミサイルまで対応できる迎撃力を持ち、ミサイル迎撃という観点ではかなり汎用性が高い装備品でした。白紙撤回はちょっと残念です。  とはいえ、北朝鮮による弾道ミサイルの脅威はなくなったわけではありません。むしろ、事態は緊迫化する一方であり、別の対応策の構築が急務だと考えます。

敵地から放たれたミサイルに対抗する方法は2つ

 外国のミサイルへの対処は、つまるところ発射後の迎撃か、敵地のミサイル発射システムを事前に排除するかの二択です。  発射後にミサイルを撃ち落とす場合は迎撃失敗や破片落下のリスクがあります。当然、領土内に着弾すれば大きな被害が出ます。どんな素晴らしい迎撃システムでも限界があります。さらに、北朝鮮のミサイルは進化しており、その弾道ミサイルの中には特殊な軌跡を辿るものもあります。  着々とその能力を更新するミサイルに我が国の迎撃システムが対抗できるのかという疑問もあります。すべてを完全に撃ち落とせる保証などどこにもないのです。  また、迎撃の場合はこちらのミサイルの備蓄数以上に撃ち込まれたら対処できません。つまり、弾が尽きたら終わりです(自衛隊は予算が少なく備蓄弾薬数は最低限のわずかなものという事実はご承知のとおりです)。  また、ミサイル防衛で迎撃ミサイルが発射されるのは領土に着弾しそうになったときであり、領土内で敵のミサイルを破壊する可能性が高くなります。爆発で大被害を出すよりは、敵ミサイルの破片落下程度の被害でとどめようという考え方です。今回のようにブースターの落下が許せないというのであれば、ミサイル迎撃という考え方そのものを見直さないといけません。

敵のミサイルを国土内で撃ち落とせば甚大な被害をもたらす

 従来の専守防衛という概念に基づく「敵のミサイル攻撃を待ち、発射されたミサイルを国土内で撃ち落として被害を最小に抑える」という方法では、高い確率で国民に被害が出るとことに気付いてほしいものです。  さて、ミサイル攻撃に対しもっとも有効な「先制的自衛権行使」は、敵基地攻撃に対するハードキルとソフトキル両方を含みます。これはどちらも敵地への攻撃です。ハードキルとは敵の施設の物理的な破壊ですが、ソフトキルはその機能を奪う攻撃です。ソフトキルにはサイバーアタックなども含まれます。敵のミサイル攻撃能力を奪うといってもさまざまな方法があります。徹底的な破壊だけが選択肢ではないのです。  専守防衛による迎撃では敵の攻撃があった後しか反応できませんが、撃たれる前に相手のミサイル基地を破壊してしまえば、そもそもミサイルは飛んでこないのです。これが予防的排除(先制的自衛権行使)です。敵地のミサイル攻撃能力を排除し、将来の攻撃能力も排除できればそれに越したことはありません。  このような予防的ミサイル基地排除は、侵略ではなく防衛のためのものです。この機会にぜひ議論を進めてほしいものです。
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「敵基地攻撃能力」と政治的な問題
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