更新日:2020年08月08日 19:27
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大企業を辞め秩父で小屋暮らし。手に入れたのは憧れの満ち足りた生活

 気に入った場所が見つかったら小屋を建てる。そこが、遊びの拠点になる。プライベートに自然と向き合う。小屋という装置がそんな贅沢な時間をくれる。小さな小屋だからこそ、お気に入りのデザインを追究できる。そんな小屋の魅力とは?

小屋のある暮らし訪問 第4回 新井亮介さん(埼玉県秩父市)

小屋のすべて

埼玉県秩父の静かな山間に小屋を建て、自給自足生活を楽しむ新井さん。外壁は最近、新たに木部保護塗料を塗り直した

「スモールハウス」という言葉と世界を、手に取った本で知った新井亮介さん。「これだ!」と感じ、頭がまわりはじめた。  いつ小屋をつくって自給自足で暮らそうか。仕事をリタイアしてから? とても待ちきれない。いまではないだろうか? でも20代後半、仕事を辞めて収入を断っていいのか? 大丈夫、なんとかなる。そう思うなり新井さんは、工業高校時代の建築科の友人に建物の相談をし、土地探しを始めていた。

人生と価値観を大きく変えた小屋で暮らすという選択

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約6畳の小屋には、すべての壁面に窓を設置。必要最低限のモノで暮らしている

 埼玉県出身で、小さなころから長瀞などでキャンプに親しんでいた新井さん。埼玉の山間のエリアで、小屋を建てられる土地を探していった。  不動産業者に条件として挙げたのは、人の気配がなく静かで、川の近く。そして、携帯電話の電波が入ること。川の近くというのは、水道を引かずに飲料水以外の用水を得ようと考えたため。紹介されて訪れたなかで気になった秩父の土地は、提示された額が高かったが、半額での折り合いを狙って4分の1の額を打診した。すると、すんなりOKが出て、そのまま契約に至る。
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造成された段々状の斜面につくられたため、資材の運搬や足場の確保に苦労した

 雑草に覆われていた土地の整備は、草刈りや木の伐採から始めた。地面が見えてくると、段状に造成された傾斜地の様子が詳しくわかってきた。それで見晴らしのよい上部の細長い敷地に、小屋を建てることに。 「セメントや砂、水を運び上げるのが大変でしたが、仲間の協力を得てなんとか完成させることができました」と新井さん。小屋を入ったところの壁にある多くの手形は、小屋づくりに参加してくれた人たちに押してもらったもの。ブログで小屋づくりの過程を発信していた新井さんのもとに、さまざまな年代や背景の人が集まり、ともに汗を流したのだ。
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小屋の建設に協力してくれた人たちの手形。出入り口の脇の壁面に押してもらった

「おもしろがって手伝ってくれる人が現れるので、小屋づくりは一般的に思われているほどハードルは高くありません。失敗してもリカバーできるので恐れなくていい。こんなに楽しいことはできるだけ多くの人に知ってもらいたい」と充実感をにじませる。
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新井さんの小屋の間取り図

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1人の小屋暮らしを満喫していたら巡り会えた妻
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小屋のすべて (扶桑社ムック)

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