更新日:2020年08月08日 19:27
ライフ

大企業を辞め秩父で小屋暮らし。手に入れたのは憧れの満ち足りた生活

1人の小屋暮らしを満喫していたら巡り会えた妻

 新井さんは、この小屋で自給自足の暮らしをしている。水道、電気、ガスは引いていない。飲食用の水以外は近くを流れる川からくみ、電気はソーラーパネルで発電。小屋暮らしの毎月のコストは、光回線使用料で約2000円、携帯電話で約3000円。加えてかかるのは、自動車保険と生命保険、食費と銭湯代くらい。家賃や光熱費は当然かからない。
小屋のすべて

囲炉裏では、直火で湯を沸かしたり、焼き物をしたり。自作した自在鉤が役立っている

 毎年の固定資産税はわずか約7500円と、通常の住まいより、驚くほどローコストだ。小屋のほかに薪を使う炊事場をつくったので、ガスも必要としない。 「自然のものは飽きないですよね」と新井さんは、焚き火を見つめながらいう。完成した小屋を見に、新井さんのもとにはいまでも多くの人が訪れる。炊事場は宴会場になり、遅くまで語り合う。
小屋のすべて

焚き火もなかなかできない昨今だが、ここでは時間を気にせず火を眺めながら語り合える

 新井さんは生まれつきの難聴があり、そのためもあって人気のない立地に住むことを望んだ。静かな環境であれば、会話で相手の声を聞き取りやすいし心が落ち着く。大企業の社員を辞め小屋暮らしを始めてから、近くの狩猟会社に就職。そして狩猟イベントで講師をした際、参加者の女性と知り合って結婚。近所に彼女が開業したカフェを一緒に運営している。小屋暮らしは、新井さんの人生まで大きく変えてしまった。小屋暮らしを満喫しているときに出会った妻とは、これからの人生をともに過ごすことになんの不安もない。
小屋のすべて

天窓を設けた明るい就寝スペースでは読書も楽しめる。スマホの充電やスピーカーで音楽を楽しむためソーラーパネルも置いている

「小屋で暮らしていると、満たされた感じがあります。本当に、自分だけだともったいなくて。ひとりひと小屋の時代がきたらおもしろいですよね。人生の経験のひとつとして、すぐにでも小屋をつくることをオススメします」
小屋のすべて

日が暮れ、焚き火が明かりとなって新井さんの活動の場を照らす

写真/高橋郁子(たかはし・いくこ) 1980年生まれのフリーランスフォトグラファー。暮らしやアウトドアの分野を中心に、広告、書籍などで活動中。ikukotakahashi.com 取材・文/加藤 純(かとう・じゅん) 建築ライター/エディター。大学で建築を学んだ後、建築専門誌の編集部を経てフリーランスに。建築デザイン分野を中心に、各種出版物やWebコンテンツの企画・編集、取材・執筆を行う。著書に『日本の不思議な建物101』『「住まい」の秘密』など。“空間デザインの未来をつくる”「TECTURE MAG」チーフ・エディター
1
2
小屋のすべて (扶桑社ムック)

小屋の建て方から楽しみ方まですべてが分かる!
おすすめ記事