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コロナ禍の必読書?「散歩」の魅力を描いた谷口ジロー『歩くひと』が復刊!

谷口ジローが描いてきたさまざまな“歩くひと”

 のちに谷口ジローは『散歩もの』という作品も描いている(2003年~05年)。ヒット作『孤独のグルメ』と同じ久住昌之原作。文具メーカーに勤める男が仕事で出かけた先や休日に街を歩く。寡黙だった『歩くひと』とは対照的に、こちらは饒舌だ。歩きながら「なんだか地方みたいな街並みだな」「なんだこの店」などと独りごちたり、「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は散歩ではない/理想的なのは『のんきな迷子』」「散歩って観光とは違う/目的なんて持たず自分の好きなようにのんびり歩けることの喜びです」と散歩論を語ったりもする。
散歩もの

『散歩もの』(扶桑社文庫)より (c)パピエ

 そういえば『孤独のグルメ』の井之頭五郎も、歩きながら「ああでもない、こうでもない」と脳内会議を開いて店を探していた。原作者が同じならテイストが似るのも当然だが、そういう意味では『孤独のグルメ』も一種の散歩マンガと言えるかもしれない。
孤独のグルメ

『文庫版 孤独のグルメ』(扶桑社文庫)(c)パピエ

 これらの作品以外でも、谷口はしばしば“歩くひと”を描く。たとえば『ふらり。』(2011年)の主人公は、江戸後期に全国の海岸線を測量し、初めて精度の高い日本地図を作ったとされる伊能忠敬。まさに全国を歩いた人だが、同作では本番の測量の旅ではなく準備期間を描く。つまり、舞台は江戸である。  歩測の訓練のため橋から橋へと歩数を数えながら歩く。季節の移ろいのなかで、さまざまな表情を見せる江戸の町と身近にある自然、そこに生きる人々や動植物の姿が、測量家の目を通して艶やかに描かれる。その視線は時として、空を舞う鳶や星霜を重ねてきた桜、水に潜る亀、屋根を歩く猫、地を這う蟻の目と同化する。それはまた、見えないものを見る漫画家の視線でもあるわけだ。単行本の帯に〈谷口ジロー江戸を歩く。〉とあるが、本当に江戸の情景を歩いて見てきたかのように再現する細密な筆致は、伊能忠敬の地道な測量作業に優るとも劣らない。
ふらり

『ふらり。』(KCデラックス)(c)パピエ

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パリの街を歩く、ルーヴル美術館とのコラボ作品
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歩くひと 完全版

フランス文化勲章シュヴァリエ受章の漫画家・谷口ジロー氏が、世界に「発見」されることになった名作が、初の全エピソード収録&カラーページ再現の完全版として登場!
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