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国境を丸腰で守る…自衛隊が抱えるジレンマに悩み退官。元自衛官の告白

国境を守る自衛隊に武器を持たせられない国

陸上自衛隊

仕事量は増えているのに隊希望者は少なく、必然的に激務に…(※陸上自衛隊Facebookより)

 北朝鮮と韓国の国境線上にある両国の共同警備区域「板門店」では両国の兵士が武装してその場を守っており、その軍事境界線上は地雷原となっています。その地雷原を亡命者や工作員などが通り、犠牲者を出すこともあります。  北朝鮮と韓国は停戦中で戦争状態にあるため特に国境警備は厳重ですが、国境を守る兵士が武装するのはごくごく普通のことです。世界の多くの国々では国境警備の警察や保安官ですら、実弾を装填した実銃を持って警備にあたります。日本は自衛隊や警察や海上保安官が武装することにアレルギーを持ち、国を守る防人にも武器使用をなかなか許さない「普通でない」国なのです。  世界の人たちは「自国を脅かす国やテロリストなどの組織から国民を守る」という使命を国に託します。しかし、日本のマスコミや知識人は「自衛隊の暴走から国民を守る」という使命(?)を口にします。  日本国憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」というくだりがありますが、日本以外の諸外国には公正と信義があるという前提なのでしょう。  しかし、そんな理想論をあざ笑うかのように我が国に向けて多数のミサイルを撃ち込む国があり、領土を不法占拠する国があり、尖閣諸島で我が国の漁船を追尾する外国の公船があります。現実には「平和を愛する諸国民」なぞ存在しないのです。  そんな国々に囲まれている状況で、自国を守る自衛官がその身を守るための武力すら臨機応変に使えないままでいいのか。疑問を通り越して怒りすら感じます。自衛隊は我が国の最後の守りです。自衛隊という砦が突破された後に敗戦国となった日本がどうなるのかを想像してもらいたいものです。  尖閣諸島に100日間連続して中国の公船がやってくる今、私たちは私たちの自衛隊を丸腰で犬死にさせることなくその意思と能力を十分に発揮させるため、障害となっているルールや問題点をもう一度考え直さなければならないのではないでしょうか。  上記のパイロット氏はその後、海上自衛隊を中途退官しました。自衛隊を縛るさまざまな問題は内部から変えることができないというジレンマに苦しんだためです。現在、彼は議員秘書をしつつ、政治を変えていくために下支えとして頑張っています。  最後にもう一度、彼の言葉を紹介したいと思います。 「現状、入隊希望者も少なく、充足率も低くなっているなか、ジプチでの海賊対処行動のほかにも中東への海自部隊の派遣、アメリカだけでなくオーストラリアやインドとの共同訓練などの機会の増加、東シナ海での長期間に及んでいる監視、大規模災害の増加や災害派遣の長期化傾向(便利屋になりつつある)など、人は増えずに任務の増加、適切な文書管理、情報保証や秘密保全などの管理業務量の増大、隊員にかかる負担は年々増大しているのが現状です。  この現状を打開するために、声を上げたくても「政治的中立性」という高い壁により声を届けられない隊員たちの生の声を拾っていただければ、元隊員としてとても心強く感じます。  日本国民の生命・財産を守る最後の砦である自衛隊員たちの士気高揚、少子高齢化による入隊希望者減少に歯止めをかけられるような政策を推進していきたいと思います」
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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