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自衛隊のためにも原油安の今こそ大量に石油を買い付けるべき

その94 新型コロナと石油産業

石油は国の生命線と先人は知っていた

石油

※写真はイメージです

 百田尚樹氏の名著『海賊と呼ばれた男』のなかに、敗戦後に石油を扱う商売を認めてもらうために「旧海軍のタンクの底にある油をさらう」というシーンがあります。GHQはタンクの底の油をさらえない限り、日本が新たに石油を輸入することを認めないと言っていたのです。  石油タンクには水と汚泥のなかにわずかに油が残るのみで、作業は困難を極めました。全身泥と油まみれになり、呼吸もままならないなか、手作業のくみ上げを完遂した「国岡商店」の店員たちの気概に心を揺さぶられた場面です。  先人が石油を扱うためにどれほどの苦労をし、その仕事に命を懸けてきたかを気づかせてくれるシーンですが、この「石油は国家の生命線」という考え方を今の私たちはどれほど理解しているでしょうか。  かつて、民主党政権の時代に安住淳衆院議員(現・立憲民主党国対委員長)が「学校のプールにガソリンを貯めておけないか」と発言したことがありましたが、原油やガソリンは危険物であり、所定のルールに従い事故が起こらないような施設で安全に管理・備蓄することが不可欠です。  石油を長期備蓄する施設はオイルショックの後に増えましたが、当時とは経済規模も変わりました。石油価格が安い今が備蓄量を増やすチャンスです。安いときに買い付けておけば、それは資産価値にもなります。繰り返しますが、「石油は国家の生命線」なのです。

コロナ禍がもたらす石油産業の崩壊

 日本はあの福島原発の事故以来、ほとんどの原発を停止したままです。そのため、毎日のように大量の石油を買って燃やして発電しています。あの事故で日本は原発をストップさせましたが、逆に外国では原発の安全性が確認できたとして原発建設ラッシュがありました。先進国で原発を止め、火力発電に大きく依存している国は日本だけです。そして、日本は海外からの石油に依存しています。  尖閣諸島沖や南沙諸島での中国の動きは、日本の石油を輸入する航路「オイルシーレーン」の自由航行への大きな脅威です。尖閣諸島沖で連続して100日、中国公船がワガモノ顔で活動していますが、これはすなわち、私たちの生活からある日突然に、電気と燃料がなくなる恐怖と直結するのです。  石油や天然ガスを運ぶ巨大オイルタンカーが安全に航海できる航路は限られています。尖閣諸島や南沙諸島沖の航路の安全が脅かされれば、最短距離のルートが使えなくなります。「遠い海の話なんて関係ないわ」と言う人がいますが、電気代が大きく値上げされたり、電気の供給が停止したりすると困りますよね。これは私たちの生活に深く関係する問題なのです。
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原油の長期保存は維持コストがかかる
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