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1曲で9人を演じ分ける。黒木渚初の楽曲提供で、こゑだが見せた脅威の歌唱力と表現への貪欲さ

黒木渚もこゑだも「歌をバカにされた怒り」が原動力だった

こゑだは2000人の応募があったオーディションを経て、2011年にsupercellのゲストボーカルとしてデビュー。その後、2015年にソロデビューを果たす

――そもそも、2人が歌を歌おうと思った「初期衝動」はなんだったのでしょうか? 渚:私はその全寮制の学校で、中学校のときに歌のテストでクラス全員に爆笑されて、音痴だってことを自覚しました。そこで、それが悲しくて「笑われる人生はイヤだ!」と思って(笑)、音楽の先生に習ったポリバケツを頭に被って歌うっていう練習方法を2年間やって、普通に音程が取れる程度の人にはなってたんです。でも、歌手になろうとかは夢にも思っていなくて、普通に就職とかもしていたし。でも、バンドは楽しくて、まさかプロになるとは思っていないけど、やってるうちにいろんな人が関係してきて……っていうのが最初でしたね。 こゑだ:私は、母が自営業者でお店をやっていたんですよね。で、母はもともとピアノをやっていたりして音楽はけっこう好きだったみたいで、「お店でコンサートみたいなのをやるから、一緒に歌わない?」って、小学校中学年ぐらいのときに言われたのが人前で歌う一番最初だったと思うんです。で、詳しい内容は覚えてないんですけど、歌ったあとに母がお客さんと電話していたときに、「聴きにきているのは娘さんの歌じゃなくて、お母さんの歌を聴きにきているんだから」みたいな話をされていたのがわかったんですね。また、同じ時期に友達とカラオケに行ったときに「歌手になりたい」と言ったら、「俺の友達のほうがウメーよ」「お前、絶対ムリだろ」ってすごいバカにされたりとかして。そこで、「ハァ?」って思ったんですよ(笑)。「ハァ? 何言ってんの、全然わかってないなぁ」って。でも、そう思わせているのがすごく悔しくって、そこで負けず嫌いみたいなのが働いたんでしょうね。「もう、めっちゃ大きくなって、バカにした相手を踏み潰してやる!」と思って(笑)。 ――お2人とも歌の上手さには定評のあるシンガーなのに、最初は「歌が下手だ」とバカにされて、歌を真剣に歌い出したという共通項があるんですね。ただ、こゑださんの場合は、生まれて初めて「人間が歌っているCD」を手にしたのが自分のCDだったりとか、自分の初めてのライブまで、他の人のライブを観たことがなかったという、かなり特殊な逸話がありますが。 渚:すごいっスよ。おそろしい(笑)。 こゑだ:(笑)。そうですね。もともとは音楽を聴くことがものすごく好きだったわけではなくて、一回聴いて「あ、いいな」って思ったら、自分でずっと歌ってしまう子供だったんです。ただ、パソコンがすごく好きだったので電気屋さんに母と行ったときに、当時はニコニコ動画がすごい流行っていて初音ミクのCDが置いてたんですよね。「あ、初音ミクだ」って、そのCDを母に買ってもらったのが、恐らく一番最初で最後みたいな感じのまま「人の声のCD」を買ったことがなかったんです。それで「supercell」のゲストボーカルでデビューして、自分の歌の入ったCDをいただいて、「あ、人間の歌っているCDだ」ってなったんです(笑)。 渚:(笑) こゑだ:で、ライブに関しては今まで観に行ったことがなかったから、初めて自分のライブをやるってなったときに「勉強しに行かないとダメだよ」っていう声をもらったりはしてたんですけど、もう私の頭の中で「ライブはこういう感じでやる」みたいな、成功するイメージみたいなのがあったので、逆に観たくないなっていうのがあって、そのまま行きましたね。そしたら、アンコールの仕方がわからなった(笑)。 渚:(笑)。私の初ライブの話ってこゑだちゃんにしてないよね? こゑだ:初めて聞きます。 渚:大学生のときに付き合っていた彼氏がギターで、私が歌っていうユニットだったのね。で、初めてのライブが決まっていたのに、突然、別れちゃって(笑)。で、そのライブに元カレが「面倒だし、行きたくない」って言うから、私は「もうチケットも売ってるし、ハコにも迷惑がかかるから絶対にやったほうがいい。当日、待ってるから。楽屋で待ってるから、ちゃんと来いよ、本番に」って言って、念のために弾けないギターを持って本番に臨んだのね。で、楽屋で待てど暮らせど元カレは来なくって、ライブハウスの人に「本番でーす、黒木さんの時間です」って言われて、もうなんか、怒りでどうにかなりそうでこゑだ:(笑) 渚:「なんやねん、あいつー!!」と思って、怒りのままに弾けないギターを摑んでステージの上に出て行っちゃって。でも、そのとき弾けるコードが2つしかなくて、Em(イー・マイナー)となぜかAadd9(エー・アド・ナインス)しか押さえられなかったのね。で、すべての曲をその2つのコードで歌い殴るみたいな(笑)。わーって。で、ハッと顔を上げたら、なぜか客席にその彼がいたの。こうやって腕組んで観てて。「殺すぞぉ!!」って思いながらそっちに向かって(笑)。それが人生始めてのライブで、「音楽やめよう、こんな恥ずかしい思いをするんだったら、ライブなんて一生しない」と思った。そしたら、その日の夜にライブハウスの店長から電話かかってきて、「来月も一本、お願いしまーす」って、何を評価されたのかよくわからないんだけど、「来月も」っていう予約が入ったことで、「そっか、じゃ、練習しなきゃ」みたいな感じになって、今に続いている(笑)。 ――いや、絶対にその店長さんも電話すると思いますよ(笑)。だって、きっと尋常じゃないものをそこでは観たわけじゃないですか。2つのコードでがなり立てる怒りまくった女性という。 渚:いや、あの元カレの行動は本当に謎でしたね。今、思い出すとイラっとくるな。 ――イラっとくるけど、それがあったから、今の黒木渚がいる、というわけですね。 こゑだ:面白い(笑)。
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喉の病気を経て「歌える喜び」に目覚めた
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