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1曲で9人を演じ分ける。黒木渚初の楽曲提供で、こゑだが見せた脅威の歌唱力と表現への貪欲さ

喉の病気を経て「歌える喜び」に目覚めた

黒木渚。写真は2020年初頭に開催された「檸檬の棘」ツアーの一幕

――さて、そんな2人が今回、タッグを組んだのが「V.I.P」という曲で、こゑださんは「supercell」以降、そして自主製作以外では初めての「他人の曲」のリリースであり、また、黒木さんも他人へ楽曲提供、プロデュースをするのは初めてとなります。これはどういった経緯で? 渚:最初に会ったのは、こゑだちゃんが私の「はさみ」という曲をカバーしてくれて、しかも当時はレーベルメイトで、ニコ生に一緒に出ようとなったのが、最初に会ったきっかけだったと思うんですよ。 こゑだ:そうですね。 渚:それから一緒にライブしようねと約束してたんですけど、私が喉を壊してダメだったという流れがあって。 こゑだ:渚さんが活動休止ってなるときに、渚さんに連絡したんですよ。で、私も自分の喉や発声がうまくいかなくなったらって想像したら、すごい恐くって。だから、渚さんがそれと向き合っているのはやっぱ本当にすごいし、めっちゃ応援したいなって思いましたね。 渚:いや、でもポリープとかはよくある話じゃん。ツアー一本回ったら、みんなたいがい軽い結節ぐらいはできてる。でも、昔は私も「喉が痛い」とか、ライブのときは「(モニターからの)返しの音量がうまく調整できてないからピッチが取りにくい」とか悩んでいたけど、今回、咽頭ジストニアという病気になったら、そんなことどうでもよくて、足元から自分の声が返ってきてりゃOK。自分の声が「あー」ってやって「あー」って出りゃOKみたいな、水準がめちゃくちゃ下がったんですよ。歌う喜びのほうが勝って(笑)。その点は病気に感謝しているというか、病気にならなかったら、ずっとヘンな方法で完璧主義を貫いて歌っていたかもしれないなって思ってる。気持ちの整理に2年ぐらいかかりましたけど。 ――こゑださんもものすごい喉の持ち主ですし、黒木さんと同じ病気というのはなかなかならないと思いますけど、自分の一番の武器である「声」の変調は怖いですよね。 渚:いや、ホント、こゑだちゃんは頑張り屋さんだし、負けず嫌いだし、そういうコほど、自分でストップをかけられないんですよ。喉がヘンなんだって思うのは自分しかいないし、自分のことだから一番わかるんだけど、お客さんは待っているし、スタッフはみんな期待しているし、止まれない。でも、自分でブレーキをかけられなくなるのが、一番深刻に壊しがちだから、絶対に「喉がヤバイ」って思ったら、楽屋に立てこもるぐらいの勢いで、「今日はムリ!」って言ったほうがいい(笑)。 こゑだ:(笑) ――周りは許してくれないだろうけど(笑)。それで、今回はこゑださんからのオファーだったとの話ですが。 こゑだ:そうですね。もともと、以前にご一緒してから、渚さんの楽曲を聴いたりして、「毒」のある曲を歌うことに挑戦してみようと思ったのがひとつの理由ですね。自分がつくるものってやっぱり、自分の経験や世界の中のものでつくるようになってしまう。私は自分には知識があまりないって思っていて、逆に知識がないからこそ、独特の表現ができるような武器でもあるなとも思ってはいるんです。でも、一方で、黒木さんは自分で言葉を紡いで、小説なども書いてらっしゃるし、楽曲の中にも歌詞の中にもちょっと毒々しいエグみがあるんだけど、でも、スッと聴ける音楽をつくっているところにすごく魅了されて。そこがすごく素敵だなと思ったので、そういう楽曲を私も一緒に歌ってみたいというのもあって、お願いしました。
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自分で歌う曲と、他人に提供する曲の違い
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