東京は稼ぎたい人だけの“戦場”でいい
卓郎:今年が転換点で、今後、東京からどんどん人が流出していくんじゃないかな。
康平:年収200万円時代が到来すると、東京は物価が高すぎるというデメリットもある。
卓郎:そうそう。特に、東京は家賃の金額が恐ろしい。去年、新宿区四谷の新築アパートの募集を見たら、なんと3畳一間で家賃が7万8000円だよ! 郊外なら、余裕で戸建てが借りられるレベル。年収200万円になったらまず固定費を減らさないといけないのに、都心に住むのは悪手でしょ。
康平:でも、家賃が安いからといって、東京の人がいきなり田舎に住むのは難しいんじゃない?
卓郎:田舎は人間関係が密だし、消防団とか村祭りの準備とか道路整備とか、生業以外の村の仕事が結構多いからね。だから、住むなら、都会と田舎の中間にある「トカイナカ」がおすすめ!
私は東京から50㎞離れた郊外に住んでいるけど、すごく快適。周囲に畑がいくらでもあるから、自分で野菜を育てれば、食費もかからない。
康平:ただ、国家運営の観点から言えば、日本中のすべての人が親父みたいに田舎で農業をやると、日本の国力は弱ってしまう。
卓郎:だから、稼ぎたい人だけが東京に住んで、年収200万円でのんびり暮らしたい人がトカイナカに住めばいい。東京は資本主義経済の戦場で、生産性と野心のある人が戦う場所。年収200万円の仕事で東京で暮らす意味はまったくない。
年収200万円で満足できる価値観があれば、年収が下がっても大丈夫
康平:あと僕が大切だと思うのは、年収200万円で満足できる価値観。周囲を見ても一番不幸になっているのは、外資で年収2000万円くらいの生活を一度味わってから、その後、一気に年収が落ちた人。人間は一度上げた生活水準を戻せないんだよね。いつでも年収200万円サイズの暮らしで満足できる価値観があれば、想定外に年収が下がっても大丈夫。
卓郎:確かに、それは“心のセーフティネット”になるかもね。私は、年収200万円を確保しつつ、みんなが自分の好きなことをして、アーティストとして生きればいいと思う。
たとえば、緊急事態宣言の時、講演などの仕事は消滅した。それで、当時私がやっていた三大事業は農業と本の執筆。そして、50年間集めたおもちゃのコレクションを展示した「
B宝館」の整理。収入は減ったけど、毎日すごく充実してたなぁ。
康平:事業といってもB宝館は赤字で儲かってないじゃん(笑)。
卓郎:でも、自分の心が満たされるものがあるって大事。たとえば、農業にしても自給自足する分には儲かるものじゃない。でも、組織と違って自分の思う通りに工夫できるという魅力がある。こうした楽しみがあれば、低年収でも人生は豊かになると思う。
康平:発想次第では、農業でも儲けることは十分に可能じゃない? たとえば、今農業系YouTuberってほぼいないから、親父はYouTuberをやってもいいと思う。
卓郎:それ、共演している加藤浩次さんにも言われるんだよね。
康平:時代ごとにブルーオーシャンは必ずあるよ。それは、ウィズコロナの時代でも同じこと。たとえば、YouTubeが全盛なら、仕事の空き時間に動画編集やネットのマーケティング技術を勉強すれば、チャンスは誰にでもある。
ベストな生き方は、年収200万円でも満足できる価値観を持ちながら、自己投資を怠らず、時代に合わせて研鑽すること。その結果、年収が上がるのであれば、それが一番幸せなんじゃないかな。
【森永卓郎氏】
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。テレビやラジオなど多数のメディアで活躍。近著に『
グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』(インターナショナル新書)。
【森永康平氏】
経済アナリスト。証券会社や運用会社を経て独立し、次世代のお金の不安をなくすべく、金融教育を行う
マネネを設立。近著に『
MMTが日本を救う』(宝島社新書)などがある。
<取材・文/週刊SPA!編集部>