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飲酒運転の誘惑、タクシードライバーはどう抗っている?

タクシー行列

写真はイメージです

タクシー特有の勤務体系を逆手にとった飲酒運転

 このアルコールチェックは、出庫時と帰車時に行われる。裏を返せば、その間、つまり勤務時間中はチェックの目を掻い潜れる。タクシー業界の特有勤務体系、隔日勤務の場合は勤務時間が20時間ある。勤務中に飲酒しても体内のアルコールを消すのには十分な時間があるのだ。  ニュースにもなり記憶に残っている人もいると思うが、昨年、追突事故をきっかけにタクシードライバーが飲酒運転により逮捕された事件がある。この事件は、まさしくタクシー特有の勤務体系を使った飲酒運転だ。  出庫前のアルコールチェックを終えたあと、酎ハイをトマトジュースで割り、ジュース感覚で飲んでいたらしい。それも今回だけではなく常習的なものであったらしく、よくも今まで大事故にならなかったと思う。  長距離トラックドライバーは、一度出庫したら暫く会社には戻らない。そのため、アルコールチェックは、車内で測定しデーターを事務所に転送する。このような事件が続けば、タクシー業界も長距離トラックドライバーのように、業務中にアルコールチェックを転送するようになるかもしれない。

早朝、ビール片手に飲み歩く人をみたら温かい目を

 世間が出勤途中に缶ビール片手に歩いている人や電車の中で申し訳なさそうに缶ビールにタオルを巻いて飲んでいる人を見たら、冷ややかな目で見るのをやめてあげてほしい。タクシードライバーにとっては、明け方が世間一般のアフター5となる。ただ、時間が違うだけなのだ。コロナ禍で営業規制はあったが、最近は吉野家など牛丼チェーンでのアルコールの提供も再開し、24時間営業の居酒屋も再開しだした。  酒好きのドライバーとってのアルコールチェック対策は、我慢に我慢して飲むこの瞬間があるからかもしれない。  飲酒運転による重大事故は、過失致死傷や業務上過失致死傷罪などの過失傷害の罪を規定した刑法ではなく、危険運転致死傷罪が適用される。もはや犯罪なのである。しかし、いくら処罰を厳重しても犯罪が減らないように飲酒運転も減らない。  アルコールチェックは、測定器をクリアするためのものではなく、事故を未然に防ぐためものだ。大丈夫だろうと安易な気持ちと、あの時の「あとちょっと」「あと一口」「あと一杯」が取り返しの事態になりかねない。人生、後悔することだけは減らしていきたい。
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」
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