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タクシー乗客の「ちょっとそこまで」の指示に戸惑う。「ちょっと」の距離について

ちょっと

言葉のあやなのか、感覚のちがいなのか

 ある時、スーツケースを手にした紳士が手をあげた。空港行きかもしれないのと淡い期待を胸に乗せたが、すぐにその気持ちは弾けた。 「ちょっとそこまでお願いしたいんだけど、とりあえずまっすぐ行って」  ちょっとそこまでと思いなかなか停車の指示が出ない。まだかまだかと思いながら走っていると 「2つ目の信号を右に曲がってください」 との次なる指示。「あれ? ちょっとそこまでじゃないの」と思いつつ指示通りに走った。結局、着いた先の運賃は2000円近くなっていた。ちょっと言えない距離……。 「近い距離で申し訳ないね」  と謝られ、そのうえ申し訳ないとチップまでくれた。  またそうかと思うと、少し恰幅のいいご婦人2人組を乗せた時の「ちょっとそこまで」の距離が、歩いた方が早いと思うほどの1ブロックもない距離。タクシーを停めて、乗って、行き先を言う間に着いてしまいそうだ。そういう人に限って、フィットネスジムやサプリメントを話題にして「痩せなきゃ、痩せなきゃ」との会話をしている。大きなお世話だが、「だからそんな体型になるんじゃないの?」と思ってしまう。ほんと、大きなお世話であるが……。

「ちょっと待って」と言われて…

 また、「ちょっと」は「ちょっと」でも違った「ちょっと」の話である。清純な大学生風の女性を乗せた時の話。目的に着き、いざ精算の時に慌てて財布を探しだした。 「すみません、財布がどっかいったみたいで……家からお金とってくるので、ちょっと待ってもらえますか?」  と言い残しタクシーから降り、小走りに走っていった。しかし、10分、20分が過ぎても戻ってこない。 「ひょっとしたら乗り逃げか」と思い始めてきた。  いつもこのような時は、人質ならぬ物質としてカバンなどの身の回りの物を車内に残してもらうのだが、何せ乗客は清純そうな学生風の女性。乗り逃げがあるとは考えずに下ろしてしまった。いつまで待てばよいのか? もはや乗り逃げとして諦め、この場を離れるべきか。  しかし、乗り逃げと決め込み去ったあとにお金を持って来るかもしれない……だとしたら、犯罪者と決めつけるのはその人に悪いから戻った方が……いや、常識的に考えてあの時間じゃ……と埒の開かない堂々巡りをする始末。結局は乗り逃げと判断し、自腹を切る羽目に……。  自分自身の感覚と相手の感覚がズレと言うべきであろうか。人それぞれ、「ちょっと」の判断基準はどのようになっているのか?
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「ちょっと」の判断基準は何か?
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