仕事

年収800万円でも不満爆発。むちゃなノルマで過労死寸前な40代課長

「ジョブ型雇用」推進の落とし穴

 大手企業を筆頭に増加する「日本版ジョブ型雇用」と称される制度の採用。スキルさえあれば何歳になっても働ける、企業側も年功序列からの脱却を図れるなど、そのメリットを謳う声が聞かれるが、FeelWorks代表で人材育成のプロ、前川孝雄氏は「すべてが礼賛できるものではない」と指摘する。 「一つ目の課題は、日本には公的な職業訓練の場が貧弱でスキルを育む場が限られている点です。これまで日本の大企業では新卒一括採用が大多数で、ジョブローテーションと階層別研修で入社後に実務スキルを身につけるのが一般的でした。  しかし、企業がジョブ型採用になると、大学卒業後に即戦力として職に就けるのはAIの最新知識を持った理系学生など、ほんの一握りの人に限られてしまいます。すでに経団連が新卒採用からのジョブ型を提案していますが、市場全体が急激にジョブ型雇用へと舵を切ると、40代になってなお不安定雇用に苦しむ就職氷河期世代のように、生涯安定した職に就けない人が増えかねません」

日本の雇用は流動性が低い

 もう一つの懸念事項は、日本の雇用の流動性の低さだ。 「現在の転職市場では、中高年者は年齢で足切りされるのが実態。だから退職勧奨されても転職できない人が急増しています。ジョブ型を取り入れるのなら雇用の流動性を高めて、何歳でもスキルと意欲次第で企業を渡り歩き、働き続けられる健全な転職市場がないと意味がない」  ほかにも、職務ごとの評価制度策定の難しさや、ジョブ型に移行しても外資系企業の給与水準には及ばず優秀な人材を確保できないという指摘など、課題は山積。人件費を削りたいという企業の思惑で、ジョブ型が独り歩きする危険性をはらんでいる。
前川孝雄

前川孝雄氏

【FeelWorks代表 前川孝雄氏】 「上司力研修」「パワハラ予防講座」などで400社以上を支援。『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)など著書33冊 <取材・文/週刊SPA!編集部> ※週刊SPA!2/16発売号の特集「生き残る会社員」より
―[生き残る会社員]―
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週刊SPA!2/23・3/2合併号(2/16発売)

表紙の人/ 小芝風花

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