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「定年まで働けない」7割が回答。40~50代会社員がコストカットの標的に

―[生き残る会社員]―
新型コロナ発生から1年――。関連する経営破綻は1000件に達し、解雇された人の数は8万4883人(厚労省発表2/1時点)に上る。その波は正社員にも及び、東京商工リサーチの調査によれば、’20年に早期退職希望を募った企業は93社と前年比で2.6倍に増加。コロナを旗印に強行される組織改革で、サラリーマンの社内サバイバルは激化。中高年会社員が苦境に立たされている状況を、専門家に解説してもらった。

約7割が「定年まで働けない」と回答。ジョブ型雇用で中高年会社員は苦境に

生き残る会社員

撮影/杉原洋平

 働き盛りであるはずの40~50代会社員の約7割が「定年まで会社で生き残れない」と感じている――。  週刊SPA!が実施した全国の40~50代会社員3000人アンケートのQ1「定年まで働くのは難しくなったと感じる?」の回答結果は驚くべきものだった。「はい」という答えが7割近くにも上ったのだ。
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アンケート/パイルアップ

 その理由(Q2)を紐解くと「業績の悪化」(54.3%)が最も多く、コロナ禍の影響を色濃く感じさせる結果となったが……。 「注目すべきは2位の『年功序列の廃止』(25.1%)です。働き方改革を推し進めていた企業に新型コロナが直撃。いよいよ抜本的な組織構造改革が必要になり、ジョブ型雇用の採用や管理職削減に舵を切る企業が増えているんです」
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「業績の悪化」と回答した人が半数を超え、コロナ禍の厳しさを如実に表している アンケート/パイルアップ

 そう語るのは、組織・人事戦略コンサルタントの麻野進氏だ。  ジョブ型雇用とは、取り組むべき職務内容(ノルマ)を明確に定義し、労働時間ではなく“成果”に応じた報酬が支払われる雇用形態のこと。バブル崩壊後も日本企業に根づかなかった欧米型の成果主義だが、今回のコロナで年功序列制度からシフトする勢いだ。 「日立製作所や富士通などの企業がすでにジョブ型への転換を表明。このトレンドは中小企業にも広まると考えられます」(麻野氏)

コスト競争にさらされ続けた企業が、いよいよ人材を抱えられなくなっている

 勤続年数や役職にかかわらず、定められた職務できちんと成果を出せば報酬が得られる一方、ノルマ未達や貢献度不足という基準が明確化されるため、これまで年長者というだけで給与が約束されていた中高年会社員は給与減や、最悪の場合リストラに遭う。  ジョブ型雇用を取り入れた金融系の企業人事担当者は、企業側の思惑について匿名でこう明かす。 「年功序列は会社の成長拡大が前提の制度。この状況下で続けていくのは難しい。ただでさえ政府から『70歳まで雇用を守りましょう』とお達しが出ていて、どこかでコストカットしないと経営を維持するのに必要な人材の雇用さえ守れなくなってしまいます」  ジョブ型雇用の推進は、コスト競争にさらされ続けた日本企業が、いよいよ人材を抱えられなくなっていることを表しているのだ。
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リモートワーク定着で発生した「管理職不要論」
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