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京アニ模倣犯でよみがえる地下アイドルの恐怖体験「優しいファンが“怖い人”に」

ファンはトラブルがあった時、アイドル側の対応の仕方に注目する

悩む女性 それからというものの松本さんは「やってあげるよ」という人や、急速に距離を詰めてくる人には特に注意するようになったという。しかし、どんなに気をつけていても密接にファンと接しているため、いつまたトラブルに巻き込まれても不思議ではない。それは彼女だけでなく、アイドルとして活動をしている者全員に当てはまることだ。  では、トラブルを回避すると同時に、ファンを獲得するためにはどのようなことに注意すればいいのか? 松本さんは身を守りつつ、ファンを獲得するために、このようなことを心がけている。 「活動を応援してくれるファンの中には、活動に関わること、プロデューサーのようなことをしたくなる人もいて、そんな人はプライドが高い傾向にあります。先程お話した男性も『俺は今、この子にこういうことをしてあげている』というようなことを、自慢げに私に話してきたことがありました。だから、お金とかが目的ではなく『俺は他のファンとは違うんだぜ』といったように周りに一目置かれたかったのだと思います。  そういったタイプのファンは、平気で嘘をついて自分を大きく見せたり、支離滅裂な発言もよくします。ちょっとでも傷つけられたと感じるとすぐ爆発して何をするか分からなくて本当に恐ろしいです。そんな人は大抵他のファンからも嫌厭されています。もしトラブルになってしまったら、他のファンにしっかり事情を説明して安心させることが大切です。ファンはアイドル側の対応の仕方にも注目するので、そこは頑張りどころと言えます」  ファンを安心させることは、あらゆる信頼に繋がり、ファン目線で信頼出来るアイドル(運営)はファンを獲得出来る人だという。さらに彼女はこう続ける。 「また、アイドル活動で生活していかなきゃと思うと、焦りからついお金を稼ぐことばっかりに意識がいってしまい、ファンを大事にすることを蔑ろにしてしまいがちです。そんな気持ちに余裕が無い時ほど、トラブルを起こしやすいので、誰かに相談して客観視し、自分のいる環境や活動ペースを見直してみることも大切だと思います。  自分に合う環境とペースが見つかれば、ファンも安心して同じペースでついてきてくれるんだと、経験して分かりました」

迷惑行為をしている側はその行為を迷惑だと理解出来ていないから厄介

 後日分かったことだが冒頭の事件も、犯人男性と、被害にあったアイドルグループとの間で起こったトラブルが原因であった。  犯人男性は事件の数年前、同アイドルグループメンバーを中傷するツイートをTwitterに繰り返し投稿。それに対し、事務所側は男性と面会し中傷をやめるように注意したという。  同じアイドルとして活動する松本さんも、この事件を耳にし、思うことがあったようだ。彼女は事件に対しこのようにコメントしている。 「迷惑行為をしている側は、悪意があってやっているのではなく、楽しんでいて、アイドルや周りの人たちも自分と同じ気持ちだと思い込んでいることが多く、それが迷惑なんだと理解出来ていないように感じます。しかし、 そういう人に限って、会って喋っている時は普通だったりするので、完璧にトラブルを防ぐのは難しいです。  迷惑行為が落ち着いたと思っていても、徳島の事件のようにいつ何をされるか分からないので、常に不安はあります。この仕事をしている以上、いろんな事態を想定しておいて、最善を尽くせるようにしたいと思いました」  また、今後ライブをする時は、非常口の確認や防犯グッズも持参するべきだと改めて思ったという。そして、怪しい人物に遭遇しないように、Twitterのチェックも前よりもマメにするようになったと話す。 「アイドルとファンがSNSでいつでも交流出来るのは本来凄いことですし、とっても楽しいことなので、それを忘れたくありませんね」  徳島市で起こった事件の原因の一つとしてあげられているTwitterだが、松本さんが言うように、TwitterをはじめとするSNSは様々な人と繋がることで有益な情報を共有したり、使い方によっては人を笑顔に出来るといったポジティブな面もある。  だが、使い方を間違えると人を傷つけてしまう恐れがあるということも、サービスを利用するうえで理解しておきたい。そして、アイドルのファン全てが、今回の事件を起こした犯人男性のように、歪んだ人物ばかりでないことも、忘れないでほしい。 <取材・文/相模玲司>
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