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最年少賞金女王・大山千広「ボートレースは男女対等に戦える競技」

他人と同じでは通用しない。下積み時代は誰よりも努力を積んできた

 とはいえ、ボートレーサー養成所時代は慣れない生活の中で必死に食らいつき、ボートレーサーに必要な技術やメンタルなどを磨いていったそう。 「新人の頃は先輩の足手まといにならないように意識して行動していました。先輩が出るレースのお手伝いをしたり、実戦での礼儀や慣習を学んだり……。こうした下積みを経験しながらも、心の底では『早く一人前のボートレーサーになりたい』と思っていて、周囲と同じことをしていても通用しないと考えていたんです。雑用や先輩のお手伝いをこなしつつ、練習する時間を作ることはもちろん、ボートに乗ること以外に必要な知識や心構えを身につけなければならない。とにかくやれることは全部やって、自己研鑽に励みましたね」 大山千広 さらに、「ボートレースを始めた頃から、常に緊張感や怖さを忘れないように心がけている」と大山さんは語る。 「“水上の格闘技”と言われるくらい、ボートレースは一歩間違えると大事故に繋がってしまう。どんなに大きな舞台に立とうとも『初心忘るべからず』。無事故第一を念頭に置きながらボートに乗っています。でもそれだと、いざという時に恐怖心から勝負をかけられなくなるので、人一倍練習して怖さがなくなるように自信をつけてきたんです」

頭角を現す存在になっても、“女性アスリート”と呼ばれるのは抵抗感があった

 そんな大山さんのひたむきな姿勢やボートレースにかける情熱が実を結び、2017年ボートレース福岡「G3オールレディース」で初優勝を飾る。  以後は2018年に最優秀新人選手、そして2019年にはボートレース蒲郡「プレミアムG1第33回レディースチャンピオン」にて同競走で史上最年少優勝を果たした。  瞬く間に“ボートレース界の新生”として脚光を浴びるようになったのだ。  女性アスリートの階段を着実に駆け上がってきている大山さん。だが、本人曰く「正直あまり“アスリート”としての自覚は持っていなかった」という。 「水泳の池江璃花子さんのような、何事にも負けない強い女性アスリート像の印象を抱いているので、私が女性アスリートと呼ばれるのはちょっと恥ずかしいというか、不思議な感覚でしたね(笑)。応援してくれるファンや周囲の人からそう言われるようになったことで、『私みたいな女性ボートレーサーでもアスリートとして見てもらえるんだ』と思うようになったんです。私がボートレースに打ち込む姿を見て、ボートレースに興味を持ってもらったり勇気を与えるきっかけになれたら嬉しいですね」
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芸能活動はやらない
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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