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毎週一本のエッセーを書き続けて27年、とても楽しい作業でした/鴻上尚史

毎週書き続けたエッセー、忘れがたいエピソードも

 さて、そんなわけで、94年10月12日号から始まった『ドン・キホーテのピアス』の連載も、今回でお終いです。  約27年間、続いたわけです。  毎週一本のエッセーを書くというのは、とても楽しい作業でした。  僕は基本的にエッセーはこの連載だけで、他の依頼をすべて断ってきました。  ですから、書くネタに困ることはそんなにありませんでした。  ただ、芝居の稽古が佳境に入って、自宅と稽古場を往復するだけになった時は、ちょっと困りました。そういう時は、「今週はネタがない。きっぱりとネタがない。わはははは」と笑ってごまかしました。  内心は焦っていましたが、「ネタがないと正直に言って、笑っているだけの回が特に好きだ」と、読者に言われたこともありました。それはそれで、なんだか複雑でした。  ロンドンに1年間留学した時も、毎週、書き続けました。この時は、書きたいネタがありすぎて困りました。『ドン・キホーテのロンドン』というタイトルで文庫本にもなりましたが、あらためて出せば、ロング・セラーになるのではないかと、勝手に思っています。

また、どこかでお会いしましょう

 まあ、どんなものにも始まりがあれば終わりがありますから、粛々と受け止めています。  逆に、こんなに長く連載をさせてくれた週刊『SPA!』と歴代の編集長、そして歴代の担当編集者に心から感謝します。  それから、ずっとイラストを描き続けてくれた中川いさみさんにも。  中川さんのイラストは、本当に楽しかったです。ろくでなし子さんの時の性器のイラストは衝撃でした。  そして、読者のあなたにも。  先週、今回で最終回だと書いたら、ツイッターで何人か、「ショックだ」とか「本当ですか?」という反応をもらいました。  反応してくれて、嬉しかったです。反応がないと、誰も読んでくれてなかった、ということになりますからね。  27年間の連載のセレクト本を出せたらいいなと思っています。忘れがたいエッセーがそれなりにありますから。あ、最後の巻というか、最終巻も出しますね。  長い間、どうもありがとう。  僕は、一週間に一回、エッセーを書くのが大好きなので、また、どこかでお会いしましょう。んじゃ。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
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